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□20:何でそんなに意地悪いの
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今日から体育祭に向けて体育の授業はほぼ競技の練習だ。
今回は自由参加の競技練をするらしい。私は二人三脚の相手の佐藤君と他のメンバーと集まる。
「取り敢えず、息を合わせる事から始めよう!」
メンバーの1人が仕切る。
それぞれペアの足に紐を結びつけて遠慮気味に肩を組む。
「山崎君に怒られる…」
「大丈夫だよ、気にしないで」
ちょっと気弱な佐藤君。
山崎君の方をチラチラと何度も見る。
「準備できたー?本番で走る順番にグランド回るよー」
リーダーとなった彼の合図で3番手の私達も並び、2番手の後ろを走る。
「イッチニ、イッチニ、」
お互い声を合わせながら息を合わせ転ぶ事なくゴール地点へ近づく。

「うわわっ!」
「っ!?危ない!」
「みょうじさんっ、ダメ!」
佐藤君が何故か私の肩を組んでた手を離し離れようとした。だが、足を結んでいるので2人一緒に倒れそうになって私が咄嗟に佐藤君を庇うが佐藤君に逆に支えられる形で勢いよく転んでしまった。

「…っ、佐藤君、大丈夫?」
「……う……」
「佐藤君?!」
彼は地面にぶつけてしまった膝を押さえて唸る。
周りの皆が駆けつけて先生がおんぶして保健室に運んで行った。
「なまえちゃんも足擦りむいてる!保健室行こっ」
「平気だよ、このくらい」
「ばい菌入ったら大変だからダメ、行くよ!」
「…うん」
すずちゃんに強く促され保健委員の女子とすずちゃんの付き添いで私も保健室へと向かった。


***


あの後は色々大変だった。
佐藤君は骨にヒビが入ってたみたいで残念だが競技不参加になった。
何であの時私から離れようとしたのか聞いたら、山崎君と目が合ったかららしい。
…だから気にし過ぎだよ、佐藤君。
私の相手が居ないから私も不参加?と淡い期待を寄せたが違った。

「委員長の僕が佐藤君の代わりを務めるよ。宜しくねみょうじさん」

花宮君とペアを組む事になってしまった。
他の女子からは羨ましがられたが私はあまり嬉しくない。他のコと代わりたいくらいだ。
「オイ、もう少し早く走れねえのか?」
「フハッ。足短けえな お前」
「ごめんねみょうじさん。……なーんて言う訳ねぇだろバァカ」

皆の見えない所で罵倒される日々ですよ、はい。
私も言い返すが勝てる気がしない。
その前に私と花宮君じゃ身長の差でバランス悪いよ。
彼の肩になんて腕組めないから背中に腕を回すしかないし。
服越しでも分かる絞られたウエストに日頃の練習の成果かなと考える。

「なまえちゃん日に日に疲れた顔してるね。大丈夫?」
「もう体育の授業キツい」
「花宮君と 密着して緊張しちゃう感じ?」
精神的にキツい。

部活が終わる頃には鉛の様な身体を引きずって帰路に着く。



次の日ハチマキが配られた。
渡された自分のハチマキにマジックペンで名前と年組を書く。
「名前書いた?」
すずちゃんが聞いてきたので頷くと教室を見回す。
「ザキー、ちょっと」
山崎君を呼んだ。友達と談笑していた山崎君は此方に顔を向けると近づいて来る。

「何だよ」
「はい、なまえちゃんのハチマキ」
「は?」
「カップル!交換!」
「あ、」
「ほら ザキのも持ってこい」
私のハチマキを渡され意味が分からない顔をしていたが、すずちゃんの言葉にやっと理解して自分のハチマキを持ってくる。
「…これ」
恥ずかしげに山崎君はハチマキを私に渡す。
私もハチマキを受け取り丁寧に畳んだ。はたから見たらリア充な光景だ。
私のハチマキを持って友達の所に戻った山崎君は友達から冷やかされていた。
「いいね、いいね、青春だね」
すずちゃんがもの凄い笑顔で言うもんだから フリなんだからねと突っ込みを入れといた。

ふと視線を感じ横を見ると花宮君が口角を上げて見ていた。
バカじゃねえのって聞こえた気がした。

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