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□13:ここはひとつ大人になって
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まさかの非常事態に民宿側の人間も慌てる。
確認したら私の部屋だけ雨漏りしていた。
自分の荷物は濡れてなくて助かったけど、流石に部屋で寝れる状態ではなかった。空き部屋もないとは、これいかに。

「仕方ない。部員達の部屋に入るしかねえだろ」
「いや、ダメだろ!女子が男子の部屋に居るのは!色々不便だろ」
「何?色々って?ザキやらしー」
「お前が言うな!」
確かに山崎君の言う通り 何かと不便が生じる。着替えとか。
「グダグダ言ったって解決策出ねえだろうが」
花宮君がイラつきを抑えて怒鳴る。
私も文句は言えない。
「分かった。部員達の部屋にお邪魔する。着替えとか、はトイレでするよ。」
「決まりだな。どの部屋にするか話すのもめんどくせーから俺達の部屋な」
「うん、」
「荷物持って来い」
花宮君に促されて荷物を持ち彼らの部屋へと歩く。
後ろの方で やったネと原君の声が聞こえバシッと衝撃音がした。


「お邪魔します」
花宮君達の部屋に入って隅っこに座る。居心地は悪い。
「取り敢えず、風呂入って来れば?まだでしょ?」
「うん」
瀬戸君に勧められ荷物ごと風呂場へと持って行った。
途中、女将さんに謝罪され、お布団を持って行きますと伝えられると小走りで去って行った。


風呂から上がり部屋へと戻ると
お布団が敷かれてあった。
「なまえチャンおかえりー。何処で寝る?俺の隣空いてるよん」
「遠慮します」

何処で寝るか言われても、隅っこに決まってる。
私は出入口側の布団の上に腰を下ろした。
「え、そこ?ザキの隣?」
「あ そうなの?」
偶然にも隣の布団は山崎君の場所だった。
「なまえチャン寝込み気をつけて!」
「だから お前が言うな!」
「大丈夫。山崎君の事信じてるから」
「お、おう」
はしゃぐ原君の奥を見れば花宮君が窓辺に座り外を眺めていた。
古橋君は向かい側の布団の上であぐらをかき本を読んでいる。
瀬戸君は 言わずもがな寝てた。
3人とも我関せずですね。
「じゃあ、私食堂に行くね」
「ああ」
晩ご飯の準備をしに部屋を出て食堂に向かった。


***
そろそろ就寝時間になり そそくさと布団の中に入る。
「電気消すぞ」
花宮君の一言で電気が消される。
「おやすみ」
山崎君が小声で言ってきたので私もそれに応えて目を閉じた。

両脚の重みで目が覚めた。
上半身を起こすと山崎君の脚が乗っていた。起こさぬ様にと彼の脚をゆっくり退かすと 唸りながら私の布団に転がって来た。
吃驚してそれを避ける。
山崎君は完全に私の布団を占領してしまった。寝相悪い。
小さくため息をこぼしてスマホに手を伸ばす。まだ1時過ぎ、さてどうしたものか。
山崎君を元の布団へ転がそうと試みる、がビクともしない。
く…幸せそうな寝顔が憎い。
「どったの?」
山崎君の隣で寝てた原君が小声で話しかけてきた。
「起こしちゃった?ごめんね。山崎君が」
私の言葉に状況を理解したのか原君は小さく吹き出す。
「ぷっ、こいつ寝相悪いからね〜。なまえチャンこっち来れば?」
チョンチョンと山崎君の布団を突く。
「いや、でも」
「はーやーく。皆起きちゃう」
空いてしまった山崎君の布団の方へと急かされ仕方なく移動する。
「やったネ、なまえチャンの隣〜♪」
ツっと近づく原君。
「セクハラはダメですよ?」
「大丈夫。2人っきりの時にするから♪おやすみー」
「…おやすみなさい」
サラッと前髪が動き原君の瞳と目が合った様な気がした。

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