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□11:暑さと熱さと合宿
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眠い目を擦りつつ学校に向かう。朝から重たい荷物を持つのはしんどい。
校門前にはマイクロバスが停車しており何人かが集まっていた。
「皆さんおはようございます」
一軍の部員達に挨拶を交わしていく。1人坊主頭の彼、松本樹(まつもと いつき)君に無意識に頭を下げる。彼は少し不思議がっていたが他の部員に話しかけられ、そちらに意識を向けた。
…実は彼もスタメンだと気付いたのが昨夜の自室で冊子の参加者の欄を読んだからです。
すみません松本君、存在感なかったなんて もう思ってないからね。
「後、来てねえのは原と健太郎か」
花宮君が腕時計を見る。集合時刻まで後7分。
「ちっ。取り敢えず来てる奴らからバスに乗り込め」
『ハイッ!!』
ゾロゾロとバスに乗り込む部員達。私は荷物を開きっ放しのバスの側面のトランクに入れた。
バタバタと走る音が聞こえたので見ると原君と瀬戸君だった。
「あー間に合った!セーフ」
「遅刻したら練習5倍にするつもりだったのにな。残念だったな」
「全然残念じゃないだろ」
2人が来た事を確認した花宮君はバスの中に乗り込む。
原君と瀬戸君が荷物を持ってトランクに近づく。
「おはようございます」
「おはよー なまえチャン、モーニングコールしてよ〜」
「頼まれてないので」
「え?頼んだら毎日してくれるの?」
「ううん」
「即答!ウケる(笑)」
「喋ってないで早く荷物入れろよ。みょうじさん おはよう」
2人が荷物を入れ終えバスの中に乗り込む。最後に私が乗ったものの何処に座ろうか。
安定の山崎君の隣は原君が座っていた。花宮君の隣は瀬戸君がアイマスクを着けて既に寝ていた。はやっ。
「みょうじさん隣空いてる」
古橋君が自分の隣を指差して話し掛けてくれた。
「あ、じゃぁお邪魔します」
遠慮がちに隣に座る。
運転手さんが学校から出て来てトランクのドアを閉めるとバスに乗り込んで来た。
「全員居ますかー?」
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」
花宮君が爽やかに答えお辞儀をする。私や他の部員達もよろしくお願いしますと挨拶をすると運転手さんは運転を始めた。


***

バスが走る事 約1時間、騒がしかった車内もだんだん静かになってきた。朝早かったのでほとんどの部員が寝ている。
かくゆう私もバスの心地よい揺れにウトウトしてきて、いつの間にか意識を手放していた。


「着きましたよー」
運転手さんの声にハッとして目を開けた。
私の頭が傾いていて片側だけ温かみを感じたので隣に顔を向けると
古橋君に寄り掛かっていた様で。
「っ!ごめん!」
慌てて離れて古橋君に謝る。
「いや別に」
いつもの色のない目で淡々と返事をされた。
後ろの座席から原君が顔を出し噛んでいたガムを膨らませながらニヤニヤ顔になる。
「古橋 役得〜♪なまえチャン ザキがヤキモチ妬いてるよ」
「や、や妬いてねーよ!」
「うるせーぞ早く降りろ」
騒がしい原君と山崎君をさっさと降ろさせ瀬戸君を起こすと花宮君もバスから降りる。
私も降りる為に中腰になる。
「ヨダレ垂れてるぞ」
「え?うそっ」
古橋君に指摘され袖で口元を拭う。
「冗談だ」
頭の上に手を軽く置き私の前を通ってバスを降りる古橋君。
あの古橋君が冗談を言った…!
意外な一面に顔が熱くなった。

バスを降りると民宿から従業員が数人迎えてくれた。
花宮君が一通り会話を済ませ、民宿の中へと入る。
二階建ての昭和な民宿だ。懐かしい感じ。
それぞれ割り当てられた部屋へと荷物を置きに向かう。
私の部屋は二階の角部屋だった。
部屋の窓を開けて空気を入れる。夏特有のぬるい風が吹いた。


***

練習は昼食後に始める為、私は食堂に一足先に向かい準備を始める。調理室の従業員に自己紹介をして人数分の食事の配膳を手伝う。美味しそうな匂いに私のお腹が小さく鳴った。

「いただきます」
全員が揃った所で食事を開始する
炊き立ての白米美味しい。
それにしても皆食欲旺盛だ。
山盛りによそったご飯がみるみる減っていく。てか食べるの早い。
食べ終えた順にトレイを片付けて食堂を出て行く。私で最後になった。
「みょうじ無理すんなよ?」
「うん大丈夫だよ。食べきれる」
山崎君が心配してくれた中、食事を食べ終えた。
後片付けを従業員の人達として部屋へと戻る。マネージャー用のスケジュール表を確認。
「やば、ドリンク作りしなきゃだった」
先程民宿の人が運んでくれたボトルの入った籠は食堂だ。
急いでまた食堂に戻りドリンク作りを始めた。

民宿から数メートル先に練習で使う体育館がある。
食堂の人がボトルを運ぶ用にキャスターを貸してくれた。
とても助かります。学校でも使用許可取ろうかな。

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