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□5:面倒くさがりだけど真面目
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昨日はあれから良く眠れなかった。後、筋肉痛になってる。腕痛い。
若干フラつきながら学校に行く。
教室に入れば隣の席の花宮君におはようと挨拶された。
続いて山崎君にも挨拶をされる。
私も薄く笑みを浮かべて挨拶を返した。
花宮君は読み途中だった本へと視線を戻した。
山崎君は私の前の空いてる席に座って言葉を続ける。
「昨日は本当にありがとな!喉乾いた時に直ぐにドリンク飲めるってサイコーだな!」
「役に立てて良かったよ」
「みょうじさんがマネージャーしてくれないのは残念だけど無理なら仕方ねーよなぁ〜」
「う…ん。ごめんね」
ズキリと胸が痛む。
昨日も他の部員からお礼を言われて嬉しかった。
仕事していても感謝される事は無いし、お金の為に働いていたから別に感謝されなくてもよかった。
でも昨日は何の見返りも求めておらず唯何も深く考えずにマネージャー業務をこなしていた。
あんなに嬉しそうに感謝されて逆に申し訳なく感じた。
また今日から彼らは自分達でやらなければならない。
練習に支障出るからマネージャーを探してると言う花宮君の言葉を反芻する。
面倒くさい事は極力避けたい。



***

放課後になり帰る途中でバスケ部員が忙しく走ってるのを見つけた。1人はボトルが入った籠を持ち1人はタオルが入った籠を持っている。
「早く済まして練習しよーぜ」
「あー…時間内に終わるかな」
バタバタと走り去る部員。

「………」
面倒くさい事は嫌い、嫌いだけど

私は唇を引き結ぶと彼らの後を追った。


部室に行くとドリンクを作ってる部員が居た。焦ってるのかボトルを落としたり粉をこぼしたりしている。見てられない。
「私がやるよ」
「え?あ、みょうじ先輩!」
私を見て吃驚される。
「洗濯してる部員にも言っといてくれる?私が引き継ぎます」
「ありがとうございます!先輩!助かります!」
何度もお礼を言って彼は出て行った。くう、1年生可愛い。
笑顔の可愛かった1年生に癒されてドリンク作りを始めた。
まだ休憩まで時間がありそうなので全てのボトルを冷蔵庫に仕舞い、洗濯物を干しに部室裏に向かった。
洗濯機のフタを開けて中のタオルは洗い終わっていた。
それらを急いで干し終え、直ぐに部室に戻った。
冷蔵庫からボトルを取り出し籠に入れる。キャスター付いてたら楽なんだけどなあ。
筋肉痛で痛む腕で休み休み籠を運ぶ。体育館に着くと皆吃驚してた。するとさっきの笑顔が可愛い1年生がやって来て籠を運ぶのを手伝ってくれた。癒しをありがとう。


部室で乾いてあったタオルを畳んでいると花宮君が入ってきた。
「どういう心境の変化?」
笑顔で聞かれる。
「…これといって理由はないの。唯、昨日花宮君が練習に支障出るからマネージャーを探してるって言葉が忘れられなくて、今日も帰るつもりだったんだけど急いで籠を運ぶ部員見てたら身体が勝手に動いてた、というか、ね」
タオルを畳みながら花宮君と目を合わせず素直に話す。ああ、顔熱い。
「真面目だねえ……」
「だから、やっぱり、」
「うん?」
「、マネージャーやってみようかなって思って」
チラリと花宮君の顔を窺う。
彼は意地悪い笑みを浮かべていた。
「ようこそ男子バスケ部へ。
今日からマネージャー宜しくみょうじさん?」

もしかしたら私は嵌められたのかもしれない。
だが、時すでに遅し。

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