main

□2:意外と青春始めてる
1ページ/1ページ


夢だけど夢じゃなかった。
高校生になって3日目。
まだ覚めない夢…夢なのだろうか?あの真っ白な表紙の本を思い出す。
もしかしたらあの本の中に吸い込まれたのかもしれない。
夢なのに昨日学校の帰りに乗った電車で誰かに足を踏まれて痛かった。
それに所々、現実とは微妙に違う店の名前とか地名とか。
………色々思う所はあるけれど今は今の現実に向き合おう。
勉強とか。進学校やばい。授業のレベルヤバい。
登校して靴箱の前で花宮君と会った。
「おはよう早いね」
「みょうじさん、おはよう。朝練だったからね」
ふと肩に掛けてるエナメルバッグに気付く。
「僕バスケ部なんだ。みょうじさんも今日は早いんだね」
「へー。あ、私は日直だから」
「そう」
朝から爽やかな彼と話しつつ
職員室に日誌を貰いに行く為途中で別れた。

先生から日誌を受取り中に書いてある項目を確認する。
日誌を読みながら歩いてた為、階段を踏み外し前に倒れ
「っと、あっぶねーな」
る事なく誰かに腕を掴まれ危機を逃れた。
「す、すみません!」
後ろに顔を向けてすぐさま謝る。
「おう。本読みながら歩くとあぶねーぞ」
助けてくれたのは同じクラスの山崎君だった。
見た目は不良っぽいが良い人である。
「それ日誌じゃん。じゃあ、日直俺とみょうじさんか宜しく!」
ニカッと笑う山崎君に私も宜しくねと愛想笑いで返す。
イケメンは苦手なのである。
彼もまたエナメルバッグを持っていた。花宮君と同じだったのでバスケ部なのだろうか。
あまり親しくないので聞くのは止めた。人見知りなので。
だが、向かう先は同じなので並んで歩く。会話は特になし。
教室に着くとチラホラ人がおり
その中に花宮君も居た。
私は黒板に日直の欄に自分の名字と山崎君の名字を書いてから席に鞄を置いた。
「日直ヤマとなんだ?」
「あ、うん」
ヤマ?山崎君のアダ名か。他の友達からはザキって呼ばれてるみたいだから意外。
「ヤマ。みょうじさんばっかりに任せるなよ?」
「わかってるよっ、」
「?」
少し様子のおかしい山崎君に疑問を覚えつつ教科書とノート等を机の引き出しに入れた。





***

昼休み。仲良くなった女子とお弁当を食べる。
イマドキの女子高生と話が合うのか不安だったが、何とか大丈夫そうだ。
「なまえちゃん、そういえば部活は?入るの?」
「うーん、特に入りたいのないから帰宅部で」
「そっかー。あ、このキセリョかっこいい!」
食べながらファッション雑誌を捲り尚且つ私とも話す彼女は器用すぎる。
チラリと雑誌を見るとイケメンモデルが載っている。
キャッキャと騒ぐ辺り若いなぁ。
マイボトルのお茶を飲んでるとみょうじさんと呼ばれたので振り向くと山崎君だった。
「昼メシ食べ終わったら5時間目の授業の準備を手伝えってさ」
「ごめん!もう食べ終わるよ。視聴覚室だよね?」
「いや、まだ時間あるし。俺まだだから先に行ってていいぜ」
「うん分かった」
私の返事を聞いて山崎君は教室を出て行った。
「視聴覚室わかる?」
「何とか。分かんなくなったら誰かに聞いてみる」
「頑張ってー」
お弁当箱を片付けて教室を出る。
視聴覚室までは渡り廊下を進んだ先にあった筈。
…思い出して足を止めた。

視聴覚室って第3まであるじゃないか!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ