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□1:落し物には御注意を…
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いつもの朝。
朝ご飯という名のコーヒーを飲み終え家を出る。
勿論カギは掛け忘れない。
いつもの電車に乗り職場へと出勤。
昼ご飯という名のコンビニのおにぎりとお茶を食べ終え、午後の仕事に取り掛かる。
やっとこの日の仕事が終了して
夜ご飯という名のコンビニのお弁当を買いに向かう。
たまにしか料理はしない。
面倒くさがりですみません…。
帰りの電車を降りて自宅までの道をゆっくり歩く。
毎日毎日代わり映えのない平凡な人生を歩んできた。
たまに刺激的な出来事ないかなとも考えたりもした。
…まぁ、私の人生こんなもんだ。
自宅まで後数メートルとなった時に何か落ちてる。
近づくと本だった。
真っ白な表紙の本。落ちてるにも関わらず汚れてない。
その本を拾い上げて、無意識に表紙を開く。
するとーーー



***

〜♪
スマホのアラームが鳴り目を覚ます。
いつもの朝が始まったなぁと起き上がる。
…あれ?
そして気付く。自宅と違うと。
そう、実家の私の部屋だ。
「は?え?」
意味が分からず昨日の事を思い返す。
確かに電車で帰った。
自宅までの道を歩いてた。
途中、白い本を拾ったっけ。
それから、それから、……思い出せない。
あの本を拾った後の記憶がない。
気付いたら実家、んん??
と、とにかくお母さんに聞いてみよう。
私は部屋から出ると久しぶりの実家のリビングに向かった。
「おはようなまえ」
「…おはよう。あのさ」
「早く食べちゃってー。転入早々チコクは駄目よ。」
「昨夜……、転入?」



***

あれから良く分からないまま
お母さんに車で送ってもらった場所は高校だった。
このブレザーは学生服だったのか。いや、大体察しはついてたけど。
《霧崎第一高校》
聞いた事ない学校だな。
いや、それより
「お母さん、何で高校行くの?」
「何言ってるの!高校生だからでしょ!」
当たり前な事を言われたけど私は社会人の筈だ。
あまりグズグズしてると怒ると怖いお母さんなので流されるまま校舎に入り職員室に向かう。
ノックをして中にお母さんの後に続いて入ると私の担任になる先生と教頭先生に挨拶した。
どうやら私は2年生らしい。
ふと帰ろうとするお母さんを呼び止め、お母さん何歳になったっけ?と聞いた。
怪訝な表情を浮かべながら小声で答えた後、お母さんは帰って行った。
…私が高2の時の年齢だった。
担任の先生に促されて私は、2年の教室に案内される。
これは夢なのかも。

私のクラスとなる教室に先生と一緒に入ると着席している生徒達に注目される。待って怖い。
こんなに大勢の人に見られるのは初めての経験だから緊張で掌を強く握る。
「じゃあ、自己紹介して」
「は、い。みょうじなまえです。宜しくお願いします」
無難な挨拶をして軽く頭を下げた。
まばらな拍手が起きる。恥ずかしい。
先生に空いてる席を指差しで教えられてその席に着席した。
「宜しくみょうじさん」
左隣から声を掛けられ視線を左隣に移すと爽やかな笑みを浮かべた男の子と目が合った。
「宜しく、です。」
愛想笑いを作り挨拶した。
「僕は花宮真。委員長してるから分からない事があったら何でも聞いてね」
「うん、ありがとう」

やっぱり夢だ。
こんなイケメン初めて見たもの。

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