短編

□俺たち思春期だからね
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*DK(男子高校生)のおバカな日常。
セクハラ注意。






***

「おいザキ」
「あ?」
「これお前に貸す」
「あん?DVD?なに………っ?!」
すかさず山崎は渡されたDVDを閉じかけのエナメルバッグに隠した。

今日の授業を終え部活に行く準備の途中で山崎の友達の梶山と三智と源馬(カッチン、ミチ、ゲンマ)が唐突に1枚のDVDを渡してきた。
「おいっ何でいきなりこんなん貸すんだよ!」
「ザキの好きそうな女優だったからー」
「は?!」
彼らが渡したDVDはR指定の物でミチの言葉にバッグに隠したDVDのパッケージに載っている女優の顔を改めて見る山崎。
「………こ、これ……っ」

「みょうじさんに似てるよね」

「ばかやろっ、なん、こんなっ、」
「んじゃ、感想ヨロ〜」
「夜更かしし過ぎるなよー」
「もし気に入ったんならやるよそれ」
「ちょ、待てって!」
山崎の制止も虚しく彼らはさっさと教室から出て行ってしまった。
仕方なくDVDを入れたまま山崎は部活に向かう。



***

部活終了後の部室にて。

「ザキ〜、制汗スプレー貸して」
「お前自分のストックしとけよ……ちょっ!勝手にバッグ漁んな!」
「ん?ーーー、キャー(笑)ザキがイケないDVD持ってるー」
「はあ?ヤマ何持ち込んでんだよ」
「ち、違ぇよ!クラスの奴らに無理矢理持たされたんだよ!」
「あ、ねえねえこの女優さ〜なまえチャンに似てない?だからザキにくれたんじゃない?」
「俺にも見せて。ーー確かに似てるね」
原の発言に瀬戸も同意する。それを聞いて古橋と花宮も目線をDVDに向ける。
「…どことなくみょうじさんに似てる部分はあるが、彼女とは違う」
「くだらねぇ」

「もういいだろっ。オラ返せ!明日アイツらにつっ返すんだから」
「え〜?俺ちょっと中身観てみたい。ーよっと」
山崎の手をするりと躱し原はテレビとDVDデッキの電源を入れた。
「おい原、部室で観んじゃねー」
「まぁまぁ!ちょっとだけ」
花宮の注意を軽く流し手際良くリモコンの再生ボタンを押す。


*ここから会話のみでお楽しみ下さい。

「これ学園モノの男優見た目無理があるだろ」
「台詞棒読み大根かよ」
「え?告ったよ。その流れで?」
「出た。お決まりのシチュ」
「え?教室で?」
「ザキうるさい」
「実際、教室は無理じゃないか?」
「ハードル高いと思う。密室ならともかく」
「……………」
「……………」
「うわデカッ」
「エロいだろ…」
「あ、今の角度なまえチャンに似てた」
「え、どの辺?」
「ココ」
「確かに」
「って、みょうじの事意識するから名前出すなよ!」
「は?俺なまえチャンと照らし合わせて観てるけど?」
「言うな!」
「……………」
「舐め方エロい」
「表情ヤバい」

「……おい、お前ら」

「待って花宮、もうちょい」

「先帰るわ」
明日の練習は倍にすると決めて帰る為にドアを開けたと同時にみょうじが今まさにノックをしようと手を挙げた恰好で立っていた。

「…っと。ビブス片付けるの忘れてたから持って来たんだけど…まだ着替えてる?」
「……ふはっ。良いぜ、入れよ」
「 ? じゃあ、失礼するね」

花宮の不敵な笑みに疑問を覚えつつ部室の中に入ったみょうじに気付かない山崎達。ビブスを所定の場所に片付けたみょうじは、何を真剣に観てるんだ?と視線をテレビに移すとすぐに理解した。
「え、花宮君注意しないの?」
「したけどな。まあ明日の練習は3倍にした」
「そう、なんだ。邪魔しちゃったね」

「おわっ!?みょうじ?!あ、お、い、いつからそこに!!?」
「わ、本物だ!」
「本物だ、って何」
「その女優がみょうじに似てるんだとよ」
「え?私に?」
テレビに数歩近づきマジマジと映像を見つめるみょうじの行動を皆は凝視しつつ冷や汗をかく者、赤面する者、彼女の次の反応を予測する者さまざまだ。

「…自分では自分の顔とか似てる?とか分かんないや」
「お、おぉ。悪いなっもう消すわ!」
「え?別に良いよ。お邪魔したの私だし」
「なまえチャン反応薄っ。普通女子って悲鳴あげるか怒ったりしない?」
「そんな反応しないよー。私も子供じゃないし、まぁ高校生だし興味持つのは当たり前だし、健全だし」
「……何か逆に寛容なのが恥ずい」
「みょうじさんって経験者?」
「バ…っ!瀬戸!!何聞いてんだおまっ、」
「……瀬戸君がセクハラして来た」
「寛容なんでしょ?」
「それとこれとは別ですけど。あ、ホラDVDヤマ場だよヤマ場。私は失礼しますさようなら」

瀬戸に言葉を被させまいと早口で喋りみょうじは部室から出て行った。

「……あ!俺も帰るっ。みょうじ待ってくれっ」
「…俺も一緒に帰る」
「え、ザキDVDは?」
「お前に貸す!明日持って来い」
「え〜、めんどくさ」
山崎は慌てて荷物を抱えてみょうじを追いかける。古橋もその後を追った。DVDも既に終わってメニュー画面になっている。

「…ちっ、帰りそびれた」
「花宮DVD観るなら貸そうか?」
「借りるかバァカ!」
「せと」
「帰って寝る」

花宮と瀬戸も部室から出て行き1人残された原は黙々と帰り支度を済ませ、しっかりとDVDを持ち帰った。

次の日には、山崎のクラスまで来て大声で「ザキわすれものー」と例のDVDを投げ渡し山崎を辱めた。



〜完〜

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