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□74:慣れてないから
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すずちゃんに黄瀬君の写真を送ったらもの凄く喜んでくれた。よしよし。

「もうなまえちゃんに足向けて寝らんない」

私の寝る方角まで聞かれた。よしよし。
思いきって頼んだ甲斐があったな。
それから昼ご飯に学食で購入して来たプリンを貰った。美味しいから食べてね!と言ってすずちゃんは部活の用事で出かけて行った。私はお弁当箱と貰ったプリンを机に広げて、ボッチ飯をしてると前の席に誰かが座ったので何気に目線を向けた。

「………」

古橋君だった。

「古橋君、1人?」
「ザキ達は学食で俺だけだ」
「そう、…言って来たの?」
「いや何も」
「そ、そっか」
「高橋さんが陸上部の人と居るの見掛けたからみょうじさんは1人で居るのかと思って来たら、思った通りだった」
「…あー、私がすずちゃんしか友達居ないとか思ったでしょ?これでもちゃんと居るからね!今日はボッチ飯の気分だっただけだからね、」
「じゃあ、俺が此処に居るのは困る?」

小首を少し傾げる古橋君に不覚にも可愛いと思ってしまった。

「困らないよ。てか、古橋君ちゃんと食べた?」
「ああ、ん?みょうじさん学食に来たのか?」
プリンを見て聞いてきたので、すずちゃんに貰ったと答えた。
古橋君と取り留めない会話をしているとバスケットボールを2つ抱えた先生にいい所に居たと話し掛けられた。
「外の渡り廊下の隅に転がってた。誰かが片付けるのサボったんだろうな〜」
こういうの本当に困る。使うなと言いたい。
「悪いがバスケ部!戻して置いてくれっ」
「…はい」
ボールを2つ受け取り、教室に戻る。聞こえていただろうから古橋君に特に説明はせずにお弁当箱を片付ける。
「じゃ、私は体育館に行くね」
「俺も行くから。バスケ部だし」
「うん、そうだね。ありがとう」
ボールを2つとも持とうとする古橋君に半分こしよう、と死守した。


***

体育倉庫にボールを片付ける時に他のボールを触ってみると持って来たボールが若干空気圧が弱い事に気付いた。
ついでだから空気を入れよう。

「みょうじさん?」
「あ、古橋君ボールの空気を入れたいからちょっといいかな?」
「ああ。それじゃあ、空気入れ取って来る」
「うん、お願いします」
空気入れのカゴから1つ取って来て私に手渡す。
「しっかり押さえててね」
「ん」
古橋君の両脚にボールを挟み更に両手でしっかりと固定する。これでボールは逃れられないだろう。
昼休みの時間も限られてるので自分的に速いスピードで空気入れを動かす。その甲斐あってすぐにボールは回復した。腕痛い。
「手伝ってくれてありがとね。戻ろっか」
「ああ」
ボールをカゴに入れた時予鈴が鳴った。虚しくも昼休みが終わってしまった様だ。するとドタバタと慌ただしい足音が体育館に響いて来た。

「ラッキー、扉開きっぱなしじゃん!」
「マジか。んじゃ、これ投げといて」
「おうっ。俺のスペシャルシュート見せてやんよ」
「うっぜ(笑)」
男子達の話し声が聞こえたかと思うといきなりバレーボールがこちらに向かって打たれて来た。
「危ない!」
「!?」

咄嗟に古橋君が私を身を挺して庇ってくれた。
私達が居る事に気付かなかったのか男子達は笑い合いながら体育館を出て行ってしまった。


古橋君の背中にぶつかったバレーボールが足下に転がる。

「ふ、古橋君….背中、」
「……っ。大丈夫だ。みょうじさんは?」
「私は全然大丈夫だから!背中見せてっ」
慌てて彼の上着の制服ごと後ろのワイシャツを捲る。少しだが赤くなっている。投げたのか蹴ったのか分からないがやけに強い威力だ。

「念の為保健室に行って湿布貼ろう?」
「いや、本当に大丈夫だ」
「スポーツマンは身体が資本!」
古橋君の手を引いて保健室まで連れて歩く。それを大人しく付いて歩く古橋君の引いた手が握り返してくる。

…………そういえば庇ってくれた時抱きしめられたな。




***


「この程度ならすぐ良くなりますよ」

「ありがとうございました」
「ありがとうございました」

保健医の先生に湿布を貼ってもらいお礼を告げる。
「じゃあ、記録つけてね」
「はい」
「あ、私書くよ。古橋君着替えてて」
「分かった」
保健室に設置されたパソコンに生徒名と来訪理由等を打ち込む。私の時は手書きだったのにハイテクな時代になったな。


「先生ー!友達が気分悪いってトイレから動けないんです!」
「あらあら、吐いたりはしたの?」
「まだ。でも吐くかも」
「何階?他の女の先生呼んで」
「2階です」
2階は2年生の学年だけど大丈夫かな?話を聞いて気になる。保健室に来た生徒とこの場から離れる前に先生が私と古橋君を見た。

「また誰か来たら2階に居るって伝えといて下さいね。別に終わったら戻ってもいいからね。あ、後ベッドに休んでる子が居るから静かにね」
「先生早く!」
「はいはい、じゃあお大事に〜」
早口で述べて腕を引っ張られて先生は出て行った。
上着を着て古橋君が立ち上がったので私も残りの部分をパソコンに打ち込む。
「よし、古橋君確認して」
「ーーうん、問題ない」
「じゃあ、!」
隣を見た時古橋君の顔が意外に近くて思わず照れた。

「…さっき抱きしめた時思ったんだけど」
「へ、え?!」
「みょうじさんは良い匂いがするな」
「あ、ありがとう……」


突然の不意打ちにそんな言葉しか出てこなかった。

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