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□71:また新たな悩みが出来るんだ
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目に見えて練習がハードになって来てる。花宮君に渡された新メニューはいつものと違っていた。その分瀬戸君の居眠りも減ったけど。
皆がダッシュに行ってる間に洗濯しとかなくては。使用済みのタオルが入った籠を抱えて部室裏に向かい洗濯機を回した。触れた水が冷たくて早く春にならないかなと考える。
「あの、みょうじ先輩」

「ん?沢君どうしたの?」
「すみません、タオル1枚出すの忘れてました」
「ああ、大丈夫。貸して」
癒し部員の1人沢君からタオルを受け取ると洗濯機の一時停止を押してもう一度タオルを放り込む。
「次は忘れないでね」
「はい……、あの、」
「まだ何か忘れてた?」
「いえ!え、っと…みょうじ先輩のれ、連絡先お、教えてくださいっ」
「私の?」

バスケ部の連絡網ってあった様な……あ、違う。花宮君達5人しか知らないや。部長である彼の連絡先なんか後々聞いたし。
「…や、深い意味ないです!みょうじ先輩に相談したい事とか、ほ、他の部員には言いにくい話とか……無理ですか…?」
「いいよ」
「ーー!ありがとうございます!!良かった…!」

…子犬が、子犬がいるっっ。お姉さんキュンキュンするじゃないか。
「じゃあ、帰りに交換しよっか」
「はいっ!また後で!」
嬉しそうに沢君は練習に戻って行った。ふふっ、後輩に頼られるって良いな。
本日の癒しを吸収してもうひと頑張り出来る気がする。



***


部活後の片づけも終わらせ、制服に着替えた私を山崎君と原君と古橋君が外で待ってくれていた。
マネージャーに復帰してからよくこの3人と帰る事が増えた。たまに花宮君と瀬戸君とも途中まで一緒に帰る。古橋君は逆方向と聞いてたが別に私達と同じ方向からでも帰る事は出来るらしい。少し遠回りするだけだとか。

「お待たせ」
「おー。んじゃ行こうぜ」
「はーあぁぁ今日もつっかれた〜。俺そろそろレベルアップするかも」
「は?」
「マジマジ。経験値溜まってるし」
「速攻Bボタンでキャンセルだな」
「それ進化だから」
「みょうじさんは身体大丈夫か?無理するなよ」
「私は平気。皆と比べてそんなに負担多くないし、ね…あ、沢君!」
校門の前で沢君が立っていたのでそちらに駆け寄ると軽く会釈をして来た。
「お疲れ様でした!」
「うんお疲れ様。それから、はいコレ」
ブレザーのポケットから着替える前に書いた連絡先を差し出すと律儀に両手で受け取ってくれた。
追いついた3人が不思議そうな顔を浮かべて私と沢君を交互に見る。
「何それ?」
「先輩お疲れ様でした!」
「おう、お疲れ。…で?何か用事だったのか?」
「あ、はい。みょうじ先輩の連絡先を教えてもらってましたっ」

「「「……え?」」」

「それじゃあ失礼します!みょうじ先輩ありがとうございます!また明日っ」
「うん、またね」
走り去って行く沢君の後ろ姿を見送ってると原君が身を屈めて私の顔を覗き込んできた。

「なまえチャン何で連絡先聞かれたの?」
「え?何か私にしか話せない悩みとか部員には言いにくい話とかあるからだって。可愛いよね」
「可愛いの?!んじゃ、俺もなまえチャンにしか言えない話したいから、いっぱい電話やメールしていい?」
「常識の範囲内なら」
「待て。みょうじさんの迷惑になるからお前は駄目だ」
「うわヒデー」
「…….、早く帰ろうぜ。門が閉まる」
「あ、ザキ待てよ」
珍しく原君のおふざけをスルーして山崎君が歩き出す。
「みょうじ、早く」
「あ、うん」
山崎君に促され隣に並んで一緒に歩く。
「みょうじさん、他にも男子から連絡先聞かれたりしてる?」
「うーん、特には」
「他校は?」
「今吉さんくらいかなぁ」
「そうか」
古橋君はそのまま目線を前に向けた。彼から好意を持たれているのは周知の事実なので、私が他の男の子から連絡先とか聞かれたりするのは嫌なんだろうな、と思ってしまう。自分を好いてくれる人と一緒に帰ったり部活も一緒だったり普段通りに居るのはどうなんだろうか?古橋君の気持ちを受け取る事が無理な私は友達として接する他ならない。
「なまえチャン、スマホ鳴ってるよ」
「……あ、うん」
気付かない私の代わりに原君が教えてくれたのでスマホを見ると沢君からで番号とアドレス登録よろしくお願いしますという旨のメールだった。新規登録を完了させて改めて沢君のアイコンを見るとキジトラ猫とバスケットボールの2ショットで可愛い猫に頬が弛んだ。飼い猫かな?

「……そんなに嬉しいのかよ?」
「いや、可愛いなぁと思って」
「お前、1年はそればっか言うのな。みょうじよりデケェじゃねぇか」
「えー?身長高いけど先輩先輩って慕って来るの可愛いよ。弟みたい」
「おとーと?」
「うん」
「……そ、っか、弟なっ。でもあんま甘やかすなよな!」
「善処します」

そんなに1年生を甘やかして見えるのだろうか?気を付けなければ。
2人と話してる山崎君を見ながら、古橋君の事ちょっと相談してみようかなと思った。

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