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□59:スイミン時々ボウカンシャ〜瀬戸side〜
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物事は大体寝てる間に進んでる。


みょうじなまえと言う転入生がマネージャーとしてバスケ部に入部したのも俺が寝てる時だったし、俺のホクロを押したそうに良くオデコを見ていた。やらせないけどね。

寝てる間は物事が良くも悪くも進んでる。だが、勉強は悪くならない。俺は頭が良いから。花宮の次に。
部活中はザキに起こされるのが多かったが最近まではみょうじさんに起こされる回数も増えて来た。
愛用のアイマスクで視界ゼロでも分かる女子特有の匂い、男とは違う優しい声音。
「瀬戸君起きないとホクロを押し」
「させないから」
自分のオデコ付近に気配を感じて手を伸ばすと指を1本掴んだ。
アイマスクをずらすとみょうじさんの人差し指で、彼女と目が合う。
「…現行犯逮捕」
「まだ押してないから未遂です」


そんなやり取りも今じゃ懐かしい。
俺達の試合を初めて観た日から馴れ合ってない。
誠凛に負けた日にみょうじさんはマネージャーを辞めた。
1番ショックを受けてたのはザキ。何かみょうじさんを好きっぽいみたいだから。俺は恋愛は、あまり興味は無い。それより寝てたいから。
古橋がみょうじさんの事を好きなのもビックリ。古橋のタイプ?だっけ?
まあ、朝から1人でラジオ体操してたのは面白かったし、からかいがいはあるけどね。灰崎の名前を出したら珍しく感情的になったのを見てそんなに、なんだと思った。
俺が寝てる間に色々周りで進んでるんだなー。勉強は寝てても大体理解出来るけど人の気持ちは寝ていても起きていても良く分からない。特に色恋沙汰は。
少しだけ古橋とザキが彼女を奪い合う場面を観てみたい好奇心はあるけど。
私の為に争わないでって台詞言うのかな?それはそれでコッチからすれば面白そう。


***

休み時間に教室でいつもの如く寝ていたら、近くで談笑してる女子からみょうじさんの名前が聞こえ目が覚めた。寝てる体を崩さず意識をそちらに向ける。
「マジバで他校の男子達と居たの見ちゃった!」
「前に通ってた時の友達なんじゃない?」
「かなぁ?イケメン揃いで逆ハー状態だったな〜。オレンジのジャージって何処の高校だっけ?」

……オレンジのジャージねぇ。
思い当たるのは秀徳のバスケ部じゃん。へー。

「いいね〜逆ハー。あ、今度の休みさぁ、」
あら、もう話題変わった。女子って意味不。それ以上みょうじさんの話題は出る事もなく興味も削がれ俺はまた寝る事にした。
秀徳とはスタメンは直接試合してないし何故仲良くマジバで飯を食べ合う関係になったのか。みょうじさんってそんなに社交的な性格してたかな。
俺達とは関わらない代わりに他の学校のバスケ部とは関わるんだ。
…ラフプレー嫌ってるしね、あの2人に好かれても嬉しくないんだろうねぇ…。
御愁傷様。



けど俺の考えは外れた様だ。
ザキがみょうじさんと仲直りしたらしい。
本当に人の気持ちは理解し難い。
寝たフリをして会話を静聴する。今度は桐皇のバスケ部ですか、もう全校のバスケ部と仲良いんじゃないの?少し吹き出しそうになるのを堪えた。
原がみょうじさんを誘うどーのこーのをボンヤリしながら聞いてるとザキに叩き起された。もちっと優しく起こしてくんないかな。起きてたけど。
あ〜またみょうじさんに起こされたい。男は乱暴でやだ。

古橋と2人になった所で心を揺さぶってみた。目の下の筋肉が引くついた。
「…諦めたらそこで試合終了だよ」
「………似合わない事を言うな」

ごもっとも。

その後沈黙が続いたと思ったら意外な言葉。
「もう一度頑張ってみようか」
ははっ。
「似合わない台詞」
面白いねソレ。
丁度良いタイミングで現れたみょうじさんが本屋に入って行くのを古橋と見届けて、すっごい見つめてる古橋に一言告げて先に帰る。



これからどんな事になるのやら。
まずはザキが一歩リード、古橋はどう動く?ラフプレーは流石にしないか?
…って別にバスケじゃないか。
まぁいいや、帰って寝よ。
そしたら事態は進んでるしね。

楽しみ楽しみ。

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