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□44:登山ですよ
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「林間学校最後のイベントは登山だ!皆張り切って登れよー!」

体育の先生の元気な声に似合わないテンションの低い生徒達。
それは、私も同じだ。
「初心者コースと上級者コースを選んで下さい。各自チェックポイントに先生が居ますからねー!」
初心者と上級者は距離が違う。ほとんどの生徒達が初心者コースの方へと集まる中、バスケ部の皆は上級者コースの方へと集まる。
私も遅れない様にと、すずちゃんに声をかけてから山崎君の背を追う。
「山崎君!」
「え、みょうじお前大丈夫なのかよ?」
「いや、皆が敢えて上級者コース登るのに私だけ初心者コースは変でしょ?」
「でもよー…」
心配顔の山崎君に大丈夫だと笑みを見せる。
「疲れたら無理せず休憩しろよ」
「うん。古橋君ありがとう、そうするね」
「足が痛くなったらオンブしてあげんねー♪」
「原君…。それはちょっと遠慮するかなぁ」
「ラジオ体操でもしとく?」
「…準備運動なら」
各々声をかけられて よし、と意気込む。
「はい、これ見てチェックポイント確認して」
花宮君が差し出した紙に上級者コースの地図とチェックポイントに赤マルがしてあった。
バスケ部員しか上級者コースに集まってなくて自然の流れで花宮君がこの場を仕切る。
「全員で行く訳にはいかねぇからテキトーな人数で組んで登れ。最初の奴等が出発した5分後に次のグループが出発。後も同様だ」
「花宮君。私は最後に出発していい?体力的にも皆と違うし足でまといになりたくないし」
絶対最初に出発したとしても追い越されそう。
「何?みょうじ1人で登るつもり?バカじゃね?そんなもん無理に決まってんだろ。お前は1軍と登れ」
「う…」
やはり、単独行動はダメらしい。
これ以上我儘を言ったら花宮君に泣かされそうなので、いや泣かないけど
仕方なしに従う。


他の部員達が出発する中1軍は、最後に回されいよいよ私達の番になった。
「……よし、5分経ったな。行くぞ」
花宮君が腕時計を確認して1軍の皆と出発した。山道は多少なりとも舗装されてるものの けもの道と言った所だ。
私は皆の最後方を歩く。
最初のチェックポイントに到着した時、偶然すずちゃんとも合流した。
「うわー意外とそっち早くない?上級者コースでしょ?」
「皆が体力あるしね」
「初心者コースだからってダラダラ歩いてんだろ」
「うっさいザキ。あ、折角だから写メ撮ろー」
「うん」
すずちゃん持参の自撮り棒で一緒に写真を撮る。
早くしろよと山崎君に促されコースが違うので、すずちゃんと別れた。
「みょうじ大丈夫か?辛かったら言えよ」
「ありがとう。まだ大丈夫」
山崎君が隣に並んで心配してくれる。
「おい、次のチェックポイントまで走るぞ」
「え」
花宮君の言葉に思わず眉間に皺が出来た。
「先にスタートした奴等には既に伝えてある。2軍を追い越すつもりで走れ」
「マジかー。なまえチャンはどうすんの?俺達と走るとか無理っしょ?」
当たり前だ。
死ぬぞ私。

「ふはっ」
彼の癖のある笑い声に皆の視線が集中する。





「みょうじには、良い思いをしてやるよ」

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