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□3:迷子の迷子の…
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どの視聴覚室か聞いてなかった為
仕方なく手当たり次第に行く事にした。
私が最初に向かってたのは第3視聴覚室だったようで
カギが掛かってたので次の視聴覚室に向かう。
さっきの渡り廊下を通り一階にある第1視聴覚室に向かう。
またもやカギが掛かっていた。
深い溜め息を吐く。
体力ないし精神的には若くないのでキツい。
最後の第2視聴覚室を目指す。
途中やっぱり分からなくなったので丁度よく廊下を歩いていた教師に場所を訪ねて向かった。
目的の第2視聴覚室に辿り着いた。少し小走りで移動したおかげで息が切れてしまった。階段何度か上がった所為で。
息をその場で整えてると視聴覚室の中から声が聞こえてきた。
ああ、此処で正解かな。
ノックをしようと手をドアの前に掲げる。
「転入生の名前なんだっけ?」
「みょうじなまえ」
「そうそう!どんな感じ?可愛い?美人?」
「普通じゃね?」
………なんというバッドタイミング………!
話題の中心に自分が言われてる事に加え見た目の感想とは最悪である。
どうしよう…,山崎君が、来るの待とうかな。うんそうしよう。
私は気付かれない様に踵を返す。
「で、お前はどう思う?花宮。隣の席なんだろ。ザキに聞いたよん」
はなみや?
ピタッと動きが止まってしまった。
「あ?別に興味ねぇよ。委員長として転入生の相手すんのは当然だろ?めんどくせーけどな」
「アハ♪花宮の猫被りに騙されてカワイソー」
「うるせーよ原、練習2倍にするぞ」
「それはカンベン」
な……なるほど。
花宮君ってそんなコだったのね。
まだ高校生なのに何という二重人格…!うっかり騙されてしまった。
あんな会話を聞いてしまい早く此処から立ち去らないといけない。
一歩前に足を運んだ瞬間

ガラリと視聴覚室のドアが開いた。


「……………」

「………あ」
そこには見知らぬ男子が表情の分からない顔で立っていた。

「みょうじさん?どうしたの?」
後ろから爽やかな笑顔の花宮君が
近づく。
「つ、次の授業の準備をしに」
「ああ!それなら此処じゃくて第3視聴覚室だよ」
最初に行った所かよ。キツイ。
「あ、そうだったんだ。ありがとう!」
私は駆け足でその場を後にした。
何にも聞いてませんって態度を見せて、後 舌打ちが聞こえたのも気の所為にする。
やっと第3視聴覚室に着いた時には既に山崎君が居て手伝いに遅れた事を謝罪した。
逆に第3視聴覚室って言わなかった事を謝られたけど。



***

あれから花宮君はいつも通りに
私に接してきた。
私も極力いつも通りにする。社会で身に付いた愛想笑いと社交辞令フル活用して
私の方が人生経験長いんだ。負けないぞ
日直の最後の仕事を終え、日誌を書く。
「山崎君。後は日誌書くだけだから部活行っていいよ」
「マジ?悪いな」
「ううんお疲れさま。部活頑張ってね」
「おう、おつかれ。また明日な!」
ヒラヒラと手を小さく降り山崎君が教室を出て行くのを見送り、日誌に視線を戻す。


「失礼しました」
職員室に日誌を届け終わり靴箱に向かう。
ローファーに履き替え出入り口前の人物に思わず肩が跳ねる。
「……花宮君?」
「日直お疲れ様」
「お疲れさま…」
「みょうじさん」
何となく彼の声が低く感じた。
何?と訪ねた私の声も小さくて
聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが、花宮君の目が私を捉える。
「ちょっと手伝ってくれない?」
「え?」

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