長編
□xoxo(停止中)
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湯気が出そうなほど暑い練習室。
空調が壊れているのかどれだけ温度を下げてもぬるい風しかクーラーからは出てこない。
「あーもうなんなんだよ…」
ダンスの練習を中断したオセフンは目の前にある大きな鏡に映る自分に舌打ちした。
どれだけやっても上手くいかないターン、何回も講師から注意されるステップ…悩みの種は数え切れないほどにある。
周りの同期や先輩にも相談できず、苦しい日々を送っていた。
暇を見つけては練習室に来ては踊っているが上達しているのかどうかも自分ではわからない。
…こんなんでデビューなんてできるのかな。
スカウトされて事務所に入ったが周りには当然自分よりかっこいい人やダンスのうまい人なんていくらでもいて全く自信を失っていた。
何回めかもわからない溜息をつきぼんやりと高い天井を見上げる。
手を伸ばしても届かない。
客席にたってパフォーマンスをして
ましてや韓国で有名になるなんて到底無理な気がした。
…家に帰りたい。
ツンと鼻の奥が熱くなり目頭にじんわりと温かいものが浮かんできた。
止める間もなく目尻からそれは溢れていく。
誰もいない練習室で一人声を殺して泣いていた。
そのとき、ガチャリという音がしてドアが開いた音がした。
「!!」
誰か来た!
セフンは咄嗟に涙を拭きドアの方向を見た。
そこには同じく驚いた顔をした同い年くらいの男が一人立っていた。
セフンに気づくとキュッキュッとシューズの音を響かせながら近づいてくる。
そしてセフンを見下ろすようにして覗き込むと
「練習終わった?」
と淡々と聞いた。
セフンはぽかんとしてその鬱陶しそうな早くどこかへ行けとでも言っているような顔を見上げた。
…なんだよ、人が泣いてたのに。
「はい…たった今終わりました。すいません、すぐ退きますから。」
喧嘩しても得はないと踏んでそのまま素直に起き上がった。
自分の荷物を持つとクーラーのリモコンを渡して
「そのエアコン壊れてますよ。」
とだけ言って部屋を出た。