長編

□ヒョンには敵わない(停止中)
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「ヒョン、あーんして。」


そう言えば何の疑いもなく開く口。


「おいしい?」
「おいひい」


もぐもぐと白いほっぺたが美味しそうに動く。
…年上とは思えないこの無防備さ


正直俺はいつだってヒョンが心配だ。
こんなに無防備だったらいつ誰かに襲われたって不思議じゃない。


「セフナも食べなよ」


口を開けろと言わんばかりに俺にも菓子を差し出す。


「いらない。ヒョンが全部食べてください」


「やった!」


菓子一つでこんなに笑顔になれる25歳を俺は他に知らない。


「…ほんとにヒョンはヒョンですね…」


「え?なんか言った?」


「別に何でもないです」


そう言って飲みかけのコーヒーを手に取った。
ほら、俺なんてもうバブルティーじゃなくてもいい年になったのに。


「セフナ」
「はい?」


振り向くと


ちゅ


唇に温かい感触。


「…コーヒー味」


ヒョンがふっ、と笑った。


「お前も大人になったな」


突然のことにびっくりして言葉が出ない。


「な、な、何…してるの」


コンサートやファンの前ではキスすることもあるけどプライベートではキスなんてしたことなかったから。ましてや、メンバーのいる宿舎でなんて。


「なんかセフナ見てるとキスしたくなっちゃった」


全く悪びれずそんなこと言うから


なんだか


「…」


キス一つで狼狽えてる俺がバカみたい。


「な、なんですかそれ。じゃあもう一回してって言ったらしてくれるんですか?」


何を返したらいいのか分からなくて変なことを聞いてしまった。


「して欲しいの?」


「して欲しいって…そんなこと言ってないです」


俺がそう言うとヒョンがぐいっと距離を詰めた。


「セフナ、あーんして。」


「…っ」


ヒョンの魔法にかかってしまったかのように
俺は言う通りに小さく口を開ける。


「かわいい」


「ん」


ゆっくりとその顔が近づいてきて
俺の唇と重なる。


あれ…何これ…なんでヒョンとキスしてんの。


でも拒めないのは
思いの外、近くで見るヒョンが綺麗で。
唇の感触が気持ちよくて、身を委ねてしまう。


「…んぁ……ヒョンもう、いいですから…」


なんか泣きそう。


消え入るような声でヒョンを見ると見たことのない顔をして俺を見ていた。


「ヒョン…?」
「セフナ、どうしよう…俺、セフナに興奮してるみたい。」


はあ?
思わず下に目をやると……何てことだ。ヒョンが興奮している。


「責任とってくれる?」


そう言って俺の手を取り後ろに押し倒すヒョン。


「ちょ、ちょっと待って…!」
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