天界書物庫

□低血圧
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部屋替えをした次の日……

朝5時。
あまりの寝苦しさに、ユダは目が覚めた。
(……頭が痛い…)
同じ部屋に動く人の気配はなく、静まり返っていた。
(ああそうか…部屋替えをしたのだった……)
前の同部屋の親友――ルカはこの時間には既に起きていた。
だから、あまり困ることはなかった。
(…頭痛薬……どこやったか…)
痛みのせいで考えることを止めてしまっていた。無意識のうちに、親友へ電話をかけていた――

[ユダ?どうした?]
「ちょっと…。来てくれ…鍵は開けておくから…」
[は?何の用だ?]
「薬……頭痛薬が見当たらない」
[…なんだ、例のあれか?…分かった。すぐ行くから。]
電話を切って部屋の鍵を開けたが、それ以上動けそうにないほど体がだるい。
こんなところ、同室になったばかりでよく知らないシヴァに見られたらなんと思われるか…。そもそも、クラスで仲の良いシンにさえ、教えてないことなのだ。一応生徒会長をやらせてもらっているので、こんな頼りなさそうなところは普通の人には見せられない。
眠たくはないのでただベッドに横になっているだけだが、痛みは消えない。微かにノックが聞こえ、重い体をなんとか起こすと、入ってきた親友と目が合った。
「ユダ、無理に起きるんじゃない。…まだ辛いか?」
話すのも億劫で、頷きだけ返すと、ルカは何の迷いもなく机の真ん中の引き出しを開けた。
「ほら、…飲めるか?」
差し出された薬を飲み込もうとしたが、うまく入ってくれなかった。
「…大丈夫か?いつもより酷いようだが…」
「……ルカ、悪いんだが…」
流し込んでくれないか、とはっきり言ったつもりだったが、掠れてしまってうまく言えなかった。それでもルカには伝わったようで、少しシヴァの方に目をやってから頷いた。
ふわり、とルカの香りが近づく。
本当は、こんなことさせたくはないのだが、今は仕方がない、と自分に言い聞かせつつ、薬を飲み込む。
「は、ぁ……大丈夫か?ユダ……」
ルカは離れると直ぐに心配そうに聞いてきた。
「…ああ、少しな…。…お前の愛のおかげかな?」
「馬鹿…。薬のおかげだろう?…だが、冗談を言えるのならもう大丈夫か。……じゃあ私はこれで…」
咄嗟に、帰ろうとする彼の手を掴んだ。
「…ユダ?」
「…もう少しだけ、側にいてくれないか?俺を、安心させてくれ…。」
しばらく驚いた顔をしていたが、すぐに優しい笑みになり、側に座った。
「今日はやけに甘えるな?」
「…嫌か?」
「…嫌ではない。」
「お前も素直じゃないな…」
ルカの笑みが可愛くてつい、額にキスを落とした。
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