天界書物庫

□主従関係
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「ルカ様ー!」
神殿に入るなり、神官たちの声が聞こえてきた。
「どうかなさいました?」
ルシファーが一人の神官に聞くと、その神官は、申し訳無さそうに頭を下げた。
「これはルシファー殿。…実は、ルカ様が…」
「また、何処かへ行ってしまわれたのですか?」
ルシファーが優しく言うと、神官は力なく頷いた。
「申し訳ございません …」
「いや、貴方の責任では無いでしょう…今、ゼウス様はどのようなご様子で…?」
その問いに、またも申し訳無さそうな表情を浮かべ、ため息をついた。
「いつも以上に仕事をなさらないのです。」
「…そうですか。では、私も探しましょう。」
「え、良いのですか?助かります。」
優しく微笑み、ルシファーは未だお礼を述べる神官とは逆の方に歩いていった。
ルカが何処に隠れているかなど、ルシファーには容易に想像できた。

「ルカ様」
ゆっくりとタンスの扉を開ける。
が、中には暗闇ばかり。
此処はちがったか、と呟くと、後ろから足音が聞こえてきた。
「るーしふぁーさーん!」
どんっと背中に衝撃…というほどではないが、何かがぶつかった。
「…ルカ様、今まで何処におられたのです?」
「えへへ〜僕だって、いつも同じとこに隠れないよ〜」
向こうに隠れてたんだ、と嬉しそうに抱きついてくる無邪気な天使を、ルシファーは振り払えずに頭を撫でた。
「皆が心配していましたよ。…何かあったのですか?」
「…父上が…」
そこから先を言わなくても、あの変態なら、ルカが逃げ出してもおかしくない、とルシファーは思ったが、ルカの言葉を待った。
「遊びに…行っちゃダメだって…」
涙ぐみながらも、ルカはしっかりと言った。
密かにやっぱりか、と思いつつもルカの頭を撫でた。
「ユダと遊びたいのに…」
今にも泣き出しそうに、呟いた。
「…では、今から交渉しましょうか。ちゃんと話せば、分かってくれるはずです。」
「…じゃあ、お願い聞いて?」
ルシファーが首をかしげていると、幼い手が差し出された。
「て、繋いでて?」
ルカが照れたように笑うと、それにつられてルシファーも微笑んだ。
「ルシファーさんの手、あったかい!」
先程までのことがまるでなかったかのように無邪気に笑った。


このあと、あの親馬鹿にルシファーが怒られたのは、いうまでもない…

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