天界書物庫

□在りし日の思い出
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ある、晴れた日でした。
私はいつものように、図書館に行って、いつものように、本を読んでいました。
ただ、いつもと違うのは、レイがいないこと。

光が差し込む窓辺で、私は本を読んでいました。
…でも、探してるのはこれじゃない。
途中で読むのを止め、本を閉じて、もとあった場所に戻そうと、席を立ったとき。
いつもは誰も来ない時間帯に、誰かが、この図書館に入ってきました。
「こんな朝早いのに、何か探し物?」
その天使は驚きながらも、にっこりと微笑み、私を見た。
私は、この天使を見たことがある。…気がする。

「え、ええ。少し、知りたいことがあって…」
私がしどろもどろに答えると、彼は此方に歩いてきて何を?と尋ねた。
彼の紅い瞳に、私が映った。
「下界の、行事を知りたくて…」
「ああ、それだったらここじゃないよ。向こう…ほら、あの辞典がたくさんある方。」
そういうなり、彼はその棚に歩き出した。
私は訳がわからず、ただ眺めていると彼は本を一冊取り出した。
「ほら、これ。」
「えっ…あ、わざわざすみません!」
差し出された本を受け取ってお礼をいうと、彼は少し微笑んで、違う本に目を通していた。
窓から差し込んでいる光が、彼を包み込んでいた。流れるような銀髪が、光を受けて煌めいている。伏せられた紅い瞳が、彼の白さを際立たせていて…

「…綺麗、…」
口に出してしまってから、しまった、と思った。おそるおそる彼の様子を伺うと、聞こえてなかったのか、先ほどまでと同じ体制で本を読んでいた。
気づかれなかったことにほっとしたが、次の瞬間、彼はくすり、と笑った。
「調べものは、もう終わったの?」
「えっ…?」
「さっきから全然、読んでないようだけど……あ、もしかして違った?」
彼がこちらに歩みよる。
「い、いえ!そんなことは…!ただ…」
私が言葉を濁したのが気になったのか、彼は首を傾げて私を見ていた。
「き、綺麗…と思ってたら、その…」
彼は一瞬きょとんとして、直ぐにふわりと微笑んだ。
「うん。ここから見える朝日は綺麗だよね。…いつもこの時間に来てるの?」
「え、ええ…」
そっか…と呟くと、彼は窓の外に目をやった。
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