天界書物庫

□貴方だけを
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今日もいつもの場所に出掛けた。
お目当ては大羽をもった綺麗な天使。話しかけようともしたけど、彼の前にいこうとしても足が動かない。
彼が綺麗すぎるからだ。
風に揺れる銀色の髪。整った顔。どれも僕の好みで、ずうっと眺めていても飽きない。

今日も、空を駆ける彼を見に来た。
広場が一望できる草原に立つと、彼は空気をいっぱいに吸い込む。
そして、草原を駆けて、空に跳ぶ。
その、気持ち良さそうな彼を、見るだけで十分だ。隣に、とは言わない。
…でも。今日は。
「ルカ」
赤い髪をした、これまた美少年が、名前をよんだ。
ルカ、と呼ばれた僕の最愛の人は
「ユダ!どうかした?」
僕が今まで見たことないくらいに愛らしい笑顔を浮かべてその天使に近づいた。
「飛ぶ練習?」
「うん、そうだよ。ユダは、どうしてここに?」
「んー…散歩してたら、たまたま…」
僕はこの天使を知っている。
少年天使の間で有名な、ユダ。
その容姿と、性格、能力。ゼウス様のお気に入りとも聞いたことがある。
そんな人がどうしてここに?
散歩なんて嘘でしょう?
「あ、そうだ。ユダ!」
「ん?」
「あのね、僕が上手く飛べるようになったら、ユダをつれってっていい?」
「え?…でも、ルカに負担が…」
「僕は大丈夫!ユダは、いや?…絶対、落としたりしないよ!」
目の前が白くなって行くのを感じて、僕はこの場を去っていった。
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