泡沫。

□平凡。
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英雄だとか救世主だとか誰かが騒いでいた。『界境防衛機関ボーダー』

あの日現れた英雄。そのことについては感謝をしているし、凄いくらいの感情は抱いている。
しかし、その仕事柄に大きな憧れなどはなく関心もあまりない。

通学路から見える大きな本部は圧倒的存在感を放っていて安心感と共にこの三門市の現実を突きつけた。この町は守られている。それ以外を考えてはいけない。不安で潰れてしまうから。

きっと、大丈夫。

「おはよう、雪音ちゃん」

「…!おはよう、碧海」

私は潜木雪音。高校一年の女子高校生。至って普通の生活をし、あの日は軽い被害を受けただけで済んだため、今も普通の生活をしている。
ボーダーに憧れる訳でもなく、嫌う訳でもない普通の。
そんな生活に満足していた。

「今日、学校工事するらしいから早く帰れるね」

「あ、そういえば。」

あの日のようなことがまた起こらないようにの工事だそうだ。早く帰れるなら何をしようか。そういえばそろそろ抜き打ちテストが来そうだな…。なら、図書館にでも行って勉強するのが無難だろう。これ以上成績を下げるとどうなるかわからない。そう考えながら、本部の前を横切って行く。

「今日委員会の仕事あるから早く行くね。じゃあまた」

先程まで話していたのが友人の星波碧海。彼女もまたボーダーには特に関心がない。学年上位に君臨するほどの成績の持ち主で、きっと今日も家に帰ったら私たちの苦労も知らず暇を持て余しているんだろうな。そう考えると少し羨ましくなってきた。

本部が遠くなって来るともう一度自分に言い聞かせた。

この町は守られている。
だから、きっと大丈夫。

平凡な日常がきっと続く。
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