『銀魂』
□『第4話』
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とある宇宙の何処かの見方によってはガラクタの集まりにも見える艦隊。
そこの薄暗い牢屋からは不気味な女の笑い声が響く。
「ンフフフ…ハァ…フフ、丁か半か…。」
「じゃあ…丁。」
茶碗をひっくり返し床に擦り付けている女は男に問い、サーモンピンクの三つ編みをした男が答える。
そして、茶碗を上げて女は言うのだ。
「ンフフ…半じゃ…。」
「ありゃりゃ〜、負けちった。」
牢屋の鉄格子越しに女を見てる男、神威は負けたことにたいして悔しがる素振りは全く見せない。
女は、かつて闇に咲く一輪の花なんて呼ばれていた春雨第4師団団長。
今では痩せ細り、不気味な微笑みを浮かべるくらいに落ちぶれたものだ。
***
神威がいなくなり、女の笑い声だけがこだまする牢屋に再び来客が訪れた。
「丁か半か…。」
『…半で。』
茶碗を上げてまた女は言う。
「残念…丁じゃ…。」
ひよりは哀れな女の姿に目を細めて、何も言わず背を向けて歩いた。
***
その頃、神威は船の中である隻眼の男とすれ違っていた。
お互いが何かを感じて振り返る。
神威が最近会いたがっていた“侍”。
そこでは何も起こらず、神威は阿呆提督のもとで会合に参加した。
「高杉晋助?」
「以前我らと盟約を交わした鬼兵隊なる武装集団の頭だ。」
地球の侍に興味を持っている神威は食べ物を口に詰め込んだまま話す。
と、その時スライド式のドアが開いて入ってきた女に神威は見覚えがあった。
「…月姫?」
まさか再びその名で呼ばれるとは思わなかったひよりは薄く笑う。その表情は化粧のせいもあって妖艶に映る。
『…神威、だったよね?月姫という名は捨てたの。私はひより。』
「そっか、ヨロシク、ひより。」
『…阿呆提督、何か用?』
神威に向けていた視線を阿呆に向けて話すひより。
「お前は、高杉晋助を知っておるか?」
今や春雨と関係を持った鬼兵隊、高杉の話が出てもおかしくはないが、このアホ提督の口から高杉の話が出てくることが気に入らない。
『地球では有名人よ…。随分過激なテロリストって。』
「侍といったか…棒切れ一本で最後まで開国を抵抗したという蛮族共の残党だ。」
利害が一致する範囲では使える男だと話す提督に嫌悪感しか出てこない。そして、最後に神威に言う。
「使い終わった道具は片付けよ。」
高杉達を道具と言うのか、このアホは。それもひよりの前で。高杉とひよりの関係を知らないにせよ、つくづくアホな男だ。