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□悪いのは君
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『……ん』
『あ、ヒョン起きた』
ギョンスが目を開けると、目の前に白いTシャツから覗く鎖骨が見える。
「おはよう」と声をかけられ上に目を向けると、セフンが優しく微笑んでいた。
『……ちか』
セフンの長い腕が自身の頭を支え、ギョンスの方を向いている。
あまりの近さにそう呟くと、またふっと微笑んだ。
枕元の時計を見ると、時間は6時___
『セフナ今日早いんだ?』
『しー』
『?』
セフンは、ギョンスの後ろで寝息を立てるベッキョンにチラッと目線をやる。
いつもなら同居人が寝ていようと、静かにするなんてことは無かったはずのセフンに
ギョンスは感心した。コイツも成長するんだなぁ、と。
でもそれはギョンスの思い過ごし____
しー、と言った直後、
セフンはギョンスの唇目がけてゆっくりと顔を寄せる。
寝起きでカサついたそこをセフンが包む。
ギョンスは目の前の整った鼻筋をぼーっと見つめながら
セフンが離れていくのを待った。
やがて唇の感触がなくなると、ギョンスはセフンを真っ直ぐに見つめ、
2人は目を合わせた。
『もーーーーっ、ギョンスヒョンつれないなぁっ』
朝のロマンチックなキスも、ギョンスにとってはなんて事ないようだ。
トキメキも、驚きも、ましてや恋心も、緊張すら感じられない___
がっくりと肩を落とすセフン。
『……目ぐらい瞑ってよ〜。こんなにヒョンの事好きなのにさぁ』
ベッドから出るギョンスにそう抗議しても、彼は聞く耳持たず。
『……いつか寝込み襲っていいですか。』
『…』
『もっとすごいキスじゃなきゃ、ヒョンには響かないでしょ?』
『……そんな度胸あるの?』
『あります』
ギョンスはセフンの顔も見ず、「ふ〜ん」とひと言。
『朝パンね。』
『ヒョンってば』
『早く顔洗っといで』
『むぅぅぅ』
____1時間後
『はおーーーーー』
パジャマのボタンを掛け違えたベッキョンが
大きな欠伸と共に起きてきた。
まだ寝ぼけてるようで、目も半分しか開いていない。
『おはよ。パン自分で焼けよ。』
『ほおい。ふなはー?』
『とっくに会社行った』
『おーはえー』
バタバタと洗濯物を干すギョンスを目で追いながら、
ベッキョンは心の中でまた “オンマ” としみじみ思っていた。
『熱っ』
『あーほら、よそ見なんかしてるから。』
『……』
『その卵ね、お前のお母さんが送ってくれたんだよ』
ギョンスが朝食のオムレツを指す。
『あ?そーなの?いつ?』
『一昨日電話来て、昨日届いた』
『はぁ〜?実の息子には連絡なしでギョンスにはすんのかよw』
『ベッキョナに電話してもすぐ折り返しないからだって。
ちゃんとお礼の連絡しときなよ?』
『……』
ベッキョンは小さく舌打ちをして、
ギョンスの作ったそのオムレツを頬張った。
『うまっ。____(感動の沈黙)____』
ベッキョンはケータイを取り出すと、
メール画面を開いた。
オンマ、卵さんきゅ〜♡
ギョンスがさっそくオムレツ作ってくれたんだけどさ、
これがめっちゃ美味いの!さいこぉぉ〜♡
もー俺ギョンスと結婚するわ!w
ギョンスならオンマも賛成だろ?
昨日も一緒に寝たしな!(うそうそ冗談www)
じゃ、オンマも体気をつけて。あんにょん♡
『送信っと☆』
『ベッキョナ・・・・・』
『ん?www』
『朗読しながらメール打つな!全部聞こえてんだよ!!結婚て何だよ!?
しかも冗談でも一緒に寝たとか送るな!!勘違いされるじゃないか!!!』
『あはははwwwだってほんとだしwww俺ギョンスお嫁さんにしたいしwww』
『』
『それに勘違いされないように冗談って入れたんじゃん。へーきへーき』
『それがダメって言ってんだよ!!』
『wwwwww』
・
・
・
『じゃ、いってきまーす♪』
『はい。いってらっしゃい。』
『……くら。そんなプリプリ怒んなよw』
『黙れ、触るな』
『もーw』
困ったように眉を下げて笑うと、
ベッキョンの手はギョンスの頬を包んだ。
ギョンスは恋人同士のような至近距離に動じることもなく、
熱い視線を送ってくる彼を、平常心で見据えた。
ゆっくりと近づいて、ギョンスに唇を押し当てる。
その弾力を確かめるように。
そして名残惜しそうに離したベッキョンは、こう続けた。
『アイツ、本気だからな。』
『え?』
何のことかすぐに思い浮かばなかったギョンスは聞き返した。
『セフンだよ。……あんな大男に寝込み襲われてお前抵抗できんの?』
『……起きてたんだ』
『答えろよ。アイツそのうち本気でギョンス食いにかかるよ』
『…どうかな』
『真面目に聞けよ』
『僕は2人共好きだけど恋愛感情じゃない』
ギョンスはなんの躊躇もなく言い放った。
『たとえ僕が襲われて抵抗できなくても、愛のないセックスになるだけだ。』
『…じゃあその時は黙ってヤられんのか?』
『……ベッキョナも居るのにアイツが行動起こすわけないじゃん、
ありえないって。』
『俺とセフンで襲ったら?』
『』
ギョンスの目が大きく開き、ベッキョンの深意を探るように彼を見つめた。
『ベッキョナはそんな事しない、っていうか出来ないだろ?』
ニコッと笑って見せるギョンス。
『・・・・・はいはい参りました。』
ベッキョンはそのハートの口で可愛らしく微笑む彼に
降参するしかなかった。
『行ってきます』
『いってらっしゃい』
『ギョンス課題頑張れよ』
『うん』
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