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□好きだけど好きだから
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放課後の人気の無い階段


よく知った声が聞こえ立ち止まり
下の階をのぞき込む



僕はその信じ難い光景に動けなくなった




____僕の親友はなぜ、チャニョルとキスをしているのか



なぜチャニョルはあんなに嬉しそうに笑っているのか









教えて




教えて____












『委員さーん!パソコン動かないんですけど』
『え…あ、はい、ちょっと待ってください』




今日は図書委員の休み時間担当


あまり機械が得意じゃない僕は
目の前のパソコンに苦戦していた


直そうにもどこを触っていいのやら


数分粘ったものの、諦めて先生を呼ぼうと立ち上がる


『委員さん貸してみ』
『?』



横からスッと手が伸びてマウスを動かす


その大きな手の持ち主を
僕は知っていた



隣のクラスのパク・チャニョル



慣れた手つきで操作する彼の瞳は、
液晶画面のライトでキラキラと輝いていて


僕は横で見守りながら
胸をドキドキさせていた




『……わ、直ってる……』
『へへ』
『あ、ありがとう……!』
『どーいたしまして、じゃーな!』




これが彼と初めて話した1年の冬___



でももっとずっと前__
入学式の時から、僕は彼を目で追っていたんだ


整列した中で1人だけ頭が飛びぬけていて目立つだけじゃなく、
同じ男だと思えないほどの綺麗な顔立ちで


そう、どこかの国の王子様なんじゃないかと、馬鹿げた妄想もした



彼の名前と顔はあっという間に学校中に広まった


いつも笑顔で明るくて、
成績も悪くないし、悪い噂だって聞かない

いつの間にか彼を目で追っている僕は、
彼とすれ違っただけでキャーキャー言う女子と同じ感覚だった


そんな彼は学年の中でも
いわゆる人気グループの中に所属していて、
僕なんかが話す機会はこの一年間でパソコンを直してもらった
あの時だけ____


でも2年のクラス替えで
まさかの同じクラス


誰にもこの喜びを分かち合えず
胸に秘めたまま今日も彼を遠くで見つめていた




『お前最近へーきか?なんかいっつもボーッとしてるぞ』
『え、…あ、そう?気のせいじゃない?』


休み時間中、前の席に座り僕の顔色を伺うように見つめてくる

幼なじみのベッキョンだ



『気のせいねぇ…。あ、そーいや昨日おばさんの作ったキムチ食った!やっぱ美味いよなぁ』
『あ、ベッキョニのお母さんのキムチもうちにあったよ』
『出た出たお互いにお裾分けwww』
『ぁはは』



小さい頃から家が隣同士で、
幼稚園から今まで学校も一緒


腐れ縁で今年はクラスまで一緒だ


子供の時から遊び相手はベッキョニで、
唯一心を許せる親友



何でも話せるベッキョニだけど、
さすがに僕がチャニョルに恋してる事はまだ言えてない



『ベッキョナ!』
『おぅ、チャニョラ』
『……!』


突然チャニョルがベッキョニに話しかけ、ドキッとする


『この前のアレ見た!?もーーちょーーー最高だったっしょ!』
『見た見た!お前あーいうの好きなのなw 俺も好きだけどwww』
『wwwやっぱなー!ベクとは気が合うと思ったんだよな♪』
『(ドキドキドキドキ)』
『あ、そーいやお前らいっつも一緒にいるよな』
『おぉまーな。幼なじみだから』
『そーなんだ!…図書委員さんでしょ?』
『(ドキッ)……あ、うん』
『パソコンど?あれからへーき?』
『うん、もう、大丈夫。ありがとう』
『え?なになにパソコンって?』
『いや、別に……』
『んだよハブかよーー!』



2人は楽しそうに会話を弾ませ、
僕は隣で相槌を打っていた


チャニョルが近くにいるだけで心臓が破裂しそうだったけど、

彼の声、口調、笑顔___
少しでも彼を知れた気がして嬉しかった



と、同時に
すぐに仲良くなってしまうベッキョニに感心する


それは僕には持ち合わせていない能力で、
新学期や新しい環境になる度に
いつもベッキョニが羨ましかった



僕もベッキョニみたく人懐っこく話せたら、
きっとチャニョルと仲良くなれるんだろうなぁ




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