book


□メリークリスマス
1ページ/4ページ


喧嘩の内容なんてものは
いつもくだらないものだ


毎週末は必ず食事をし
どちらかの家に泊まるのがいつもの流れだった


その日は僕がチャニョルの家に泊まることにし
行ったはいいけど、あいつはすぐにスマホとにらめっこ



チャニョルがスマホにかじりつくのなんか日常茶飯事だけど、
この日はクリスマス会だ忘年会だの計画で
いつにも増して夢中になり
僕の話す言葉に上の空で相槌を打つ状態だった
。。。目も合わせずに



『チャニョラー』
『…ん』
『クリスマスさ、』
『うん…あ、ごめん電話、もしもーし』
『……』





さすがにそんな態度のあいつに腹が立ったけど
読書をして気を紛らわすことにしたんだ


『おーいギョンスヤァ〜』


そのうちに僕も夢中になり
声をかけられて大分時間が経っていたことに気づいた


呆れた……こんな時間までスマホやってたのかよ
よくずっと画面見てられるよな



小説は終盤まで読み進めていて
このまま最後まで読んでしまいたかった僕は、
チャニョルの声掛けに目線は本に向けたまま答えた



『ギョンスヤァ〜なぁ風呂入ろー』
『…ん、今いいとこだから先入ってて』
『やだー一緒に入りたい!待つ』
『…っそ』



そう言ったはいいものの、
チャニョルの手が僕の腰に巻き付き
無理矢理バックハグする



『…………』



邪魔されてイライラするけど
ここで相手にしちゃいけないと
あえて無視する


「難しそうな本、楽しい?」「クリスマスさ〜いつもの店でDJ参加する事になった〜ギョンス来れる?」
「会社の忘年会いつ?」「っつーか年末いつから休み?」


…………………そう、この男が黙ってるわけもない
気が散って何度も同じ文章を読み返す事になり、
僕のイライラは段々と積もっていく



チャニョルはそんな様子に
気付きもしないのか
完全シカトする僕を余所に
後ろから抱きしめ
首筋に顔を埋めたり
身体を撫でたり




『ギョンスぅ〜待てないよ〜』
『………』
『風呂はいろ〜』
『……んッ』


服の中にチャニョルの手が入り込んできて
僕の胸の突起にわざと触れる


『…やめろ……っ、…アッ』


まったく聞く耳持たずで
どんどん直接的な刺激になる


『ちゃにょ、ら』
『……』
『ちょ、ほんとにやめろ、』
『………』



僕は今そんな気分じゃないんだってば
本の結末が気になるんだ
それにさっきまで
散々僕をほっといた癖に
なんて自分勝手なやつなんだ


『…ン、っちゃにょら、しつこいって!』


後ろから伸びる手を何度も振り払うのに
まったく懲りない



『なぁギョンス〜』
『……』
『つまんないよぉ〜』
『…』
『早くヤりたい』
『…………っ』



この言葉がとどめとなり
僕はついに怒りを爆発させた


『お前さ!なんなの!?』
『』


手を払いのけチャニョルから離れる


『読み終わった?入ろっ風呂♪』


僕がこんなに睨みつけて怒ってるのに
こいつはいつものイケメンスマイルで
両手を広げた
ハグしようのジェスチャーだ



その様子にまた更に怒りが沸騰する




『僕のこと何だと思ってるわけ? 何?つまんない?
よく言うよなさっきまで僕のことほっといた癖に!!
自分の用事が終わったら今度はかまってちゃんかよ!でヤリたい!?
信じらんない、最低だろ。僕はお前の都合のいい恋人じゃないからな!』
『…え、そ、ちょ…、』
『お前自分勝手すぎんだよ……ただヤリたいだけなら他探せ!帰る!』
『は!?何言って……ちょ、ギョンスヤ…待っ、』






チャニョルに有無を言わせまいと
僕は落ちていた本とコートを手に
さっさと部屋を出て行った



『ギョンス!』


僕を呼ぶ声と、キィっと鳴る玄関の閉まる音を後ろに聞きながら
アパートの階段を降りる


駅へ向かって歩き
もう日付が変わる静かな暗闇で
耳を澄ました


。。。。。。なんだ
追いかけても来ないのか………


予想外にもいつまで待ってもチャニョルの足音は聞こえず…




せっかく一週間ぶりに会ったのに…
もっと楽しく過ごすはずだったのに…
こんなけんか別れして仲直りもできないまま
自宅に帰ることになるなんて



寒空の下、一人寂しくタクシーに乗り込んだ




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ