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□あなたの最高の誕生日でありますように
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『ギョンス君は、』



彼女いないの?




そう聞くのに何回も言い留まって
聞けたのは2度目の飲み会の時だった



初めて会ったその瞬間から
俺は恋に落ちていた



きっと神様はその恋が実らない事を知っていて
わざと巡り会わせて
意地悪をしたんだ



『ギョンスヤでいいよ、同い年だろ?』



そう言って笑いかける彼を
もっともっと知りたくて



近づけば近づく程
自分を苦しめるだけだとわかっているのに



何かと理由をつけて
彼と会う機会を増やしていった




『あれ?ヌナは?』
『急に用事が入って。ギョンスヤ、俺と2人じゃ嫌?』
『ははw 嫌じゃないけど、変な感じ』
『アイツが一緒に居ると行けないとこ行こーぜ』




会う度に段々と仲良くなっていくのを感じて嬉しかった



性格の相性はとてもいい
服の好みも似てる
何より笑いのツボが一緒だ



一緒にいると笑いが耐えないんだ
楽しくて楽しくて
時間が止まればいいと思う位




『チャニョラはいいな、ヌナみたいな綺麗な彼女がいて』
『……お前だって、モテないわけじゃないだろ?』
『僕は……、』
『?』
『ううん、なかなかいい人っていないな』
『そうかぁ?じゃーこれから可愛い子がいる店行くか?』




いかにもノンケのように振る舞う自分



俺は仮面をかぶり続けて
生涯を終えるんだ


それは決められた道


どうしようもない
変えられない道




『ギョンスヤ、俺さ………結婚するんだ』




そう告げた俺の言葉に
彼は心から喜んでくれた






『ヌナ、婚約おめでとうございます』
『ありがとうギョンス君!
チャニョラが迷惑かけてない?
まったくいつの間にか私よりギョンス君と
仲良くなってるからびっくりよ!』



「新居が建ったら遊びに来てね」と数ヶ月後には妻となる彼女が言う



『はい、是非呼んで下さい』



俺はそのやりとりを
笑顔をへばりつけて見守った




彼女に不満があるわけじゃない
好きだし、この人とならいい家庭を築けると思う



至って平凡だった両親は
必死で事業を成功させ
俺は何不自由なく育ってきた


よく子供の時から
お得意先との会食に連れていかれ
彼女ともそこで出会った


まだ子供同士でよくわからなかったが、
会社を大きくしたかった両親は
ずっと政略結婚を狙っていたんだと思う


それが思惑通り現実になり
親孝行な息子に感謝してもらいたい









《ごめんねチャニョラ、行ってくる…
絶対結婚式に間に合うように帰ってくるから》




彼女の任されてる海外チームのトラブルで
急きょ渡航する事になったと連絡が入った




今日は結婚式を数日後に控えた俺の特別な日




もともとオフの今日、
彼女が居ないとなると
俺の頭に過ぎるのはよからぬ願望



スマホの画面の上で行ったり来たりしてた親指が
ついに彼の名前をタッチする




駅を出て俺を探してキョロキョロする彼を見つけて
心が弾んだ




『ギョンスヤ』




声をかければ
白い息を吐き駆け寄ってきた




『急に呼び出してごめんな』




助手席に座る彼は
シンプルなビジネススーツを纏っていて
仕事中なのが見て伺えた




『いや、今日はもう帰るだけだったから。でも急にどうした?
結婚式来週だろ?』




会えて嬉しいけど、と付け加えて微笑む彼に
胸が締め付けられた





『今日はヌナの事とか仕事の事とか
全部忘れたいんだ』
『全部?』
『そう、結婚前に…どうしてもやりたい事があって』
『…?ふーん。マリッジブルー?』
『そんなようなもん』
『僕は付き添ってていいんだ?』
『うん、お前に居て欲しいんだ』
『』



真意を確かめるように
運転する俺をじっと見つめた




『変なの』




そう言ったっきり黙って
車に揺られる




『……………で、昼間っからホテル?』





連れてきたのは予約でいっぱいのはずの人気のホテル______
最上階の部屋をコネで空けてもらった





『っそ。1回時間も気にしないでずーっと酒飲んでホテル篭もりたいって思ってたんだよね』




着ていたコートを脱ぎネクタイを緩めながらフロントにワインを頼んだ





彼はどこか納得の行かないような表情で
同じようにジャケットを脱ぎ
窓の外の景色に感嘆を洩らす





『ヌナ、中国行ったでしょ』
『あ、』
『?』
『今日は、ヌナも仕事も忘れるって言ったろ』
『……そっか、じゃあ何話す?なんか緊張する』




彼は笑った





俺はグラスの中のワインを一気に飲み干して
彼の目を真っ直ぐに見て言った




『ギョンスヤの事、話そうよ』
『ふ、僕?』




俺はもう一杯注いだワインをまた一気に流し込んだ




『もっと知りたいんだ、』




じっと見つめる俺を
不思議そうに見つめ返す彼



予想してより理性を保つのが大変だ





彼もいつもより飲むペースが早く
また1本ワインが運ばれてきた頃




『チャニョラ、耳真っ赤』
『人の事言えないですぅぅギョンスヤもですぅぅ』
『デカ耳!』



そう言って耳を触ろうとする彼の手を振り払った




『なんだよー触っちゃダメなの?』



ケチ、と笑う彼にこう続けた



『触ってもいいけど襲うよ?』




彼は押し黙る


もういいんだ
引かれても嫌われても
酒の力を借りて
今日は自分を押し殺さないって決めた




彼の手がゆっくりとまた耳に触れた


『………え?』


驚いて彼を見ると
綺麗な目は酒により潤んでいて
ゆらゆら揺れていた


そんな目で見つめられて
我慢なんかできるか



『ギョンスヤは…どこが弱いの?』


二人の間に流れる空気が変わっていく
ここだけ時計の針がゆっくりになってしまったように
しばらく見つめ合った




『……探してみる?』




彼のその言葉で俺の身体中がドクンと波打ち
一瞬眩暈のように前が暗くなった




気づくと俺は彼にキスをしていて
彼もそれを受け入れていた



ずっとずっと
妄想の中でしか出来なかった
彼に触れることも、ましてキスする事も…


思い望んできたその状況が訪れた俺は
もう彼の事しか考えられなくなっていた



柔らかい唇は想像以上
いつも一番上まできっちり留められているシャツのボタンをはずす
現れた肌はやっぱり綺麗で息を呑んだ
耳から首にかけてのホクロは星座のようで
大事にひとつひとつキスをする



身体中にキスする合間に
彼の表情を盗み見る


火照った頬、熱っぽい目は伏せて恥ずかしげに揺れる


また目を合わせると
しっかりと見つめ返される


その瞳に迷いはなかった



視線が強請るように俺の唇へと移り



甘い甘いその唇を喰んで
熱い熱いその舌を絡め取った




『ふ、…あっ』



主張する彼の性器を口に含めば
甘美な香りでいっぱいになる


イイところを探りながら
満遍なく舐め上げ


時折見上げ
目を閉じて快感に浸る彼の表情を堪能する




『かわいい』



愛しさが溢れてつい口走ってしまう




先から溢れ出る液を塗り広げ
上下に吸い付くリズムに合わせ
蕾に指を挿し入れた




『…っ、んん』




厭らしく内壁が指を締めつけ
ここに自分のを挿れた事を想像し
危うく達してしまう所だった



なんとか興奮を制御しつつ
彼に負担のかからないように
入念に解していく




『も、い?かな』



彼の身体をうつ伏せにしお尻を突き出させた



蕾がヒクヒク動いて俺を誘う



俺自身の先も
我慢汁で相当濡れていて
突き出したその蕾にゆっくりと塗りつけた



『…っ、ちゃ、にょら』



焦れったいと言うように腰が揺れる



____________そんな声も出すんだね



もっと、聞きたい




細めのその腰を掴み
次の瞬間一気に挿し込んだ



『アァッ………』



中は溶けそうなぐらい熱くて
意識も何もかも持っていかれそうになる


待ち望んだ彼とようやく繋がった嬉しさと
そこから伝わる快感に必死で腰を振った





『んぁ…っ、は…、んン、っ』



部屋に2人の吐息と
動く度に軋むベッドの音



シーツを掴んで快感を逃がす彼の
浮き彫りになった肩甲骨のライン


うなじ


背骨



全てをこの目に焼き付けておかないと




彼の手に自分のを重ね
彼の耳にキスをする


その間も腰を止めることは無い
ゆっくり強弱を付けて
時には奥に押し付けて



控えめに啼いてた彼が
徐々に大胆になる様は
言いようのない歓喜だった



体位を少しずつ変え
いろいろな角度から味わった最後に
彼のイイ箇所だけ衝き
イくのを見届けてから自分も果てた



脱力して彼の横に倒れ込む




『…はぁ…はぁ』




彼の手が俺の頭を撫で、
うつ伏せのまま視線を向けると
無表情でも微笑むでもない彼が見えた

何を思ってるかは図れないけど
それは優しい瞳だった



『……シャワー浴びる』



ベッドから降りる彼の背中を追い
抱き締めた



アルコールと行為のせいで
火照っていた身体は冷め始めていて
汗でお互いの肌がピタッと密着する


黙って後ろから抱かれる彼





『…………』
『ギョンスヤ、……俺、』



弁解するつもりはない
でも、俺のこの行為が
一時の感情だと思われてないか不安だった
彼が今どんな気持ちなのか
話が聞きたかった




でも______




『チャニョラも一緒に入る?』



振り返った彼は
いつもの可愛らしい笑顔



その笑顔を見て
これ以上踏み込んではいけないと
そう気付かされた





お互いに好きだとか、
何時まで一緒にいれるかとか、
現実に引き戻されるような事はひと言も言わず




バスローブで酒を嗜み
目が合えばキスをし、



何度も何度も身体を重ねて



恋人同士となんら変わりない時間を過ごした










『ギョンスヤ、そろそろ寝よ?』
『ん』



夜も更けてきてケジメをつける時間が近づいてきた



ベッドで抱き合いながら
優しく1回キスをして彼を見据えた




『最後……』




聞こえるか聞こえないかの声で呟く



それでも彼には聞き取れたようで
ゆっくりと頷いた






『ありがとう…最高の誕生日プレゼントだった』









来週結婚する俺の最後の特別な日





Fin♡




次ページはおまけのギョンス君sideです




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