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□10+1+@
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『…先輩!』
『?』
『俺の恋人になってみませんか?』
『は……!?』



まだ知り合って間もない
後輩からの突然の告白に、
僕は驚いて言葉を失ってしまった





Day 1



『ギョンス君、部長から電話』
『あ、はい』



朝の慌ただしい中
部長から告げられたのは、
隣の部署のイケメン君の
突然の育成係だった____


『おはようございます。突然で僕も驚いてますが、よろしくお願いします』



キムジョンイン



そう名乗った彼を、
僕は前から知っていた

背が高くてスタイルが良くて
少し色黒な肌に整った顔立ち



部署は違うけど、
ワンフロアのこのオフィスで、
彼は一際目立っていたから



『ドギョンスです。よろしくお願いします』



異動でもないのに
どうして隣の部署の彼に
こっちの仕事を教えるのかわからないけど、
この時の僕は仕事のスケジュールが詰まっていて、正直面倒だった


『じゃあ今日は、新店舗の設営サポートに行くので、着いてきて下さい』



僕の思うタイミングで返事が返ってこず、
聞こえなかったのかな、と振り返る



『あ、はい!』



僕が振り返ったことで気付いたのか、
慌てた返事が返ってきた



____思い返してみれば、この時から既に、彼から熱い視線を送られていたような気がする



その後の電車の中でも
特に話すわけでもなく
ただ僕を見つめてみたり



サポートに入った時も、
重い物を運ぼうとするとやって来て、
俺持ちます、と有無を言わさず持って行ってしまったり


段差に気をつけろだの
高い所は俺がやるだの


好意なんだろうけど
少し過剰に感じていた



『…ねぇ、なんで僕の仕事のサポートばっかするの?重い物くらい持てるし、高い所も脚立があるし…』
『あ…、すいません、…つい』


つい、


なんだって言うんだ


そんなに弱々しく見えるかな僕…



腑に落ちないまま休憩になり、
適当に入ったお店でランチを食べた時も…



向かいに座る彼がまた
僕を無言で見つめるから、
なぜなのか聞いてみた



『ねぇ…僕に何か言いたいことがあるの?』
『…え?』
『よく見られてる気がするから』
『…あ、いえ…、言いたいこととかじゃなく…』
『…なら無意識?』
『いえ……見てました』
『…え?』
『先輩、可愛いなーって……』
『』


は…?


可愛い?男なのに?



でもニコッと照れ笑いした彼が
冗談で言ったようには見えなかった


いや、それが冗談でも本気でも
返答に困ることには変わりないんだけど





Day 2




『お疲れ様です、どうぞ〜』
『あ、ありがとうございます』


事務のおばちゃんがコーヒーを入れてくれる




『まーそれにしてもイケメンだね〜ジョンイン君!』
『ははwありがとうございます〜』
『どーしてまたこっちに〜?彼女いるの?いやいやいるわよね〜ww』



おばちゃんは憎めないけど
お喋り好きが玉に瑕なんだよな



『うちのギョンス君もね〜、顔はいいんだけど彼女できないのよね〜w』
『……………』



ほらまた余計なことを



『先輩彼女居ないんですか?』
『……僕はモテませんので』
『…………でしょうね』
『え、そ、それはどういう……』
『フフっ』
『し、失礼じゃないですか』
『だって先輩、そこらへんの女の人より
可愛いですよ?』
『…ま、』
『?』

また可愛いって言った…………!




ニヤッと片方の口角を上げて笑う彼は、
悪びれた素振りもなくまたコーヒーを啜った





あまりにも普通に言ってのけるから、
きっとこの人は
思ったことを誰にでも
ストレートに口にするんだと解釈した



可愛いって言われても全然嬉しくないんだけど




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