book


□Blue
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お気に入りの窓側の
一番後ろの席。
俺の日課は黒板見るフリして
あいつの背中を眺める事。



腹立つくらい容姿端麗で
背も高くて
騒がしいけどいい奴で


クラスの人気者。



ボーッと右斜め前の
あいつを見ていると
急に振り返って目が合う



“け、い、た、い!”



先生にバレないように
声は出さずにそう言った



ケータイ?見ろってことか。



こっそりケータイを取り出すと通知が3件。



〈あのゲーム届いた!〉
〈今日俺んち来いよ〉
スタンプ



見てすぐ顔を上げると
それを待ってたあいつが
ニカッと笑いかけてきた



俺もそれに笑顔で頷き
あいつはまた前を向いた



高2で同じクラスになってから
俺らはずっとつるんでる
お互いゲームも好きだしノリも合う



親友だ。
そう思ってくれてるはず。




でも俺は違う



俺は、



パク•チャニョルが好きだから___










『じゃーーーん!』
『おーやっと届いたか』
『結構かかったよね、予約したの遅かったからかな?』



届いたソフトを見せて
目を輝かせている



『ベッキョナ用意しといて。飲み物持ってくる』
『あいよー』



用意するも何も床に出しっぱなしだから電源入れるだけじゃん。
あいつの趣味のギターとか楽譜とか漫画とかが、そんな広くない部屋に点々と散らばってる
そんな床に寝っ転がってチャニョルを待つ。



チャニョルの家にはもう何回も来てるから、図々しくもかなり寛いじゃうんだよな。



あ。そういえばベッドの下のAV増えたかな。




『あ!ベッキョナ!漁るなよー!
この前もエロ本出しっぱで帰ったろ?一応隠してんだからさー』


『わりぃわりぃwてか増えてんじゃんっwハメ撮りとか好きよねーチャニョルさんwww』


『うっせーわ!』




初めてベッドの下に並んだそれらを見た時は、まだチャニョルが好きって自覚してなかったから、なんとも思わず流してたけど



好きだって気付いてからは
俺の邪な妄想に度々使われる



あぁ、チャニョルはこれを見て抜いてるんだ、って。それを想像しながらやってる俺。絶対に言えない、俺だけの隠し事。



だからチャニョルんちに来る度
ベッドの下チェックは欠かさない。



あえてそれをチャニョルの前でやれば、
俺がヤツを好きだなんて考えもしないだろ。
男同志なんてこんな会話すんのがふつーだし。
俺はとにかくこの気持ちをひたすら隠し続けている。
気付かれてキモがられて友達でいられなくなるのだけは嫌なんだ______




『っあ``ーーーー無理!ここ無理だろ!?どーやんだよ!?』
『ベッキョナめっちゃ涙目w』
『目がしょぼしょぼすんだよッ!休憩しよ休憩ーーーーー』



ゲームの電源を落とし、買ってきてたお菓子を頬張る



『ねぇベッキョナ』
『ん?』
『俺さ、…………』



なにか余所余所しいチャニョルに
早く言えよと急かす



『…告白された!』
『…は!?は!?誰に…?』
『1年の後輩。なんか一緒の電車に乗ってるみたいでさー、ずっと気になってましたって』



照れてニヤニヤしながら喋るチャニョル。



『え、で、返事は…?』
『うん、知らない子といきなりは付き合えないからって言って、LINE教えあった』


えーっと。親友ならなんて言えばいいんだ?一緒に喜ぶのが普通か…?


『ま、まじか!良かったじゃんか!アハハハ!
で?可愛いのかよ?』
『う、うん、まぁ…』


こんな返しでよかったのか?
動揺を隠そうと焦る。
上手く取繕えビョン・ベッキョン。



『お、お前にしては久々の告白だったな!?
羨ましーよなー
俺なんか高校デビューのはずが全然だし!つーかお前のせいだ!』
『はっ!なんでだよ!?』
『お前が横にいると皆お前ばっか見んだよちくしょー』
『アハハハハwそんな事ないのにw
ベッキョナ、可愛いよ?』
『…っ…』
『?』
『可愛いってなんだよ!嬉しくねんだよばーか!』
『wwwww』



______危なかった。
可愛い、とかやめろよな。
受け答えに困る、じゃん。





『ベッキョナまた明日ね』
『おーまたなー』



すっかり暗くなった道を
家に向かって歩く



俺がチャニョルと仲良くなり始めの頃は、あいつ彼女いたんだよな。

で、あんま長続きしなくて別れるんだけど、すぐまた他の子と付き合ってさ。告られれば付き合ってたからチャラ男の名が広まって、しばらく浮いた話はなかったのに。



あの頃は別にへーきだった。
自分の気持ちに気付く前だったから。でも今はどうだ。告られた、LINE交換した、それだけで俺のこのモヤモヤする どす黒い気持ちは。




その子と付き合うのかな…。






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