book


□嵌
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『CEOお客様です』
「ん、通していいぞ」


今日のお客様は外国人男性
背が高く、整った顔立ち、少し抜け感のあるかっこいいスーツの着方_
職業はモデルかな

CEO室の扉を開けると
彼は僕に優しく微笑み会釈をして中へ入っていった



それから程なくすれば聞こえる
なにやらイヤラシイ声





はぁ


こうなると大変なんだ



3時間は部屋から出てこない





ここに赴任されてまだ間もないけど、
真昼間からこんな情事が
会社の最上階で行なわれてるなんて
下で働いている社員たちは夢にも思わないんだろうな



prrrrr




『はい秘書室です__申し訳ありません、CEOは今取込み中の為伝言を賜ります』


こうやってかかってくる電話の対応をしながら雑用を済ませたら、
いよいよ喘ぎ声しか聞こえなくなる



中から聞こえる会話はすべて英語で
何を言ってるのかは聞き取れないけど


盛り上がってる事には違いない







はぁ



昨日は綺麗な女性だったな


その前は上品な中年男性



いわゆる“バイ”ってやつなんだろうけど





何人もの人と会社でことに及んで
まったく不謹慎極まりない
その声を聞く僕の身にもなってほしいよほんと





それに___僕だって一応性欲だって人並みにあるし…、
こんな声聞かされてたら否が応でも反応しちゃうんだ






「…〜〜〜〜〜〜」






___あ…、イった……?




ズクン、と体に波が立つ



微かに聞こえてくる声色は
想像力を引き立てた


CEOはどんなセックスを
してるんだろう______



不謹慎極まりないのは僕も同じだった









rr...rr...





『はい』
「お客様がお帰りになるから見送るように」
『…わかりました』


そして扉が開き、
来た時となんら変わらぬ身格好で
来た時と同じように微笑んで会釈した



見送るため秘書室の扉を開けると、
去り際に立ち止まる彼



『Vous êtes Voilà une nouvelle personne.Quel est le nom?』
『…え?…あ、I'm sorry、I don't know French…』
『Attractive your lips…』
『……え』



突然彼の顔が僕に近づいたかと思ったら、チュッというリップ音をたて
頬にキスされた



『!!!!!』
『Bye』




パタン、と扉が閉まる




____なんだ今のは…!!!!
挨拶か!?そうなのか!?





外人さんはどうも慣れないや…








『ディオ』
『えっ、…あ、CEO、お客様のみえてる間スホ商事の方から_』
『今何してた』
『え、今…ですか』
『なぜ頬に手を当てている』
『あっ…とこれは……』
『なぜ顔が赤い』
『あ、赤いですか!?』
『質問に答えなさい』
『………はい』



腕を組み、ドアにもたれ掛かるCEOは
これまた神がかった容姿で、
綺麗な目元が僕をまっすぐに見つめていて緊張する



この人に見つめられると
すべて見透かされているような
そんな怖さがあって
僕は言われるまま正直に答えるしかないんだ




『頬に…、キスを、されました』
『ほう__それだけか』
『あ、あアトラク?なんとかリップス?…て言ってました』
『ん?』
『アトラク…なんだったかな』
『attractive?』
『あ!それです!』
『………』





怪訝そうに眉間にシワを寄せると
スーツのポケットからスマホを取り出し、
無言で何やら操作を始めた




『CEO…?』
『もうあいつはここには来ない』
『えっ、』
『_それより、ここの仕事は慣れたか?』
『あ、はいもう大分…(喘ぎ声以外)
ですがほとんどここにいるだけなので
たまに暇に思う時もあります』
『はは、ディオのそういう正直なところが好きだよ』
『!』
『ん?また顔が赤いな』
『〜〜〜っ、ほっといてくださいっ』




僕の頬に触れようと手を伸ばすCEOから身をよじって逃げる




神々しい顔で‘好きだよ’なんて
ストレートに言われれば誰でも顔ぐらい赤くなる




『ディオ…』
『な、なんですか』
『お前はなんともないのか?』
『な、何がですか?』




身をよじって逃げたはずが
すぐそばにCEOが迫ってきていた




___近い





『俺が中でセックスしてても
お前のここは反応しないのか?』
『〜〜〜ッッ!?』





CEOの手が、やっと収まっていた僕の下半身を掴んだ





『ちょ、んっ、やめてください』





しかも後ろからがっしりと体をホールドされていて
逃げようにもそれは無理だった
だいたい体格からしてどうやったって僕が不利なんだ





『さっき顔が赤くなったのはなぜだ?』
『んんッ』
『俺との情事を思い浮かべてたんじゃないのか?』
『〜ッ』
『図星か?』
『ちがっ』




____確かに…
どんなセックスするのかとは思ったけど……っ、




CEOと僕がセックスするなんて事は
全然考えたことも……





『違くないだろ?俺としてる所を想像して勃たせてたんじゃないのか?
___興奮して自慰もしたんだろ?』
『〜〜〜〜ッ、してな……』






CEOは僕の耳元で低く囁く




そして僕の腰辺りに硬くなった彼自身を押し付けてくる





___変態…っ、だな、この人………
さっきまであのフランス人とヤッてたくせに……






『CE、O……夜は会食の、予定が…、ッ』
『__全部キャンセルだ。今はお前を食べる』
『〜〜ッ、人をっ、食べ物みたいに…言わないでくださ…、』
『そうか、すまない。お前があまりにも美味しそうだから』
『…や、やめてください!』
『とか言って、なかなか満更でもなさそうだぞ。……ほら』




僕自身を弄る手が
わざとらしく反応しているその形をなぞる



急にパッと手が離れ
後ろから抱かれていた体が正面に回り


僕を軽々と持ち上げると
側にあったデスクに座らせた






『……っ』






同じ目線になった彼に見つめられる






凛々しい眉毛に澄んだ瞳___

ちょっと下向きな睫毛___


ぷるんっとした唇から覗く白い歯__


赤い舌_____


それが近づいてきて、
僕は吸い込まれてく___





音もせず触れた唇は
僕の唇の上を優しく滑り
包み込む





___なんてやさしいキスなんだろう






男のくせに、うっとりしてる自分にドキドキした







『ディオ……』




もう一度目が合う位置まで離れると
CEOは低く静かに僕の名前を呼んだ





『___俺じゃ、………嫌か?』
『っ』






眉毛を下げて
潤んだ瞳はまるで子犬のよう



____ズルい





ここまで強引に誘っといて
この質問は卑怯だ___






きっとこれもCEOの作戦なんだ





僕を手玉に取るための___






でももう遅い


CEOの手中にハマってしまった



わかっていても、もう体は彼を求めている






『……もっと、…してください』
『なにをして欲しい?』
『そ、っ、そんなこと聞きますか普通!?』
『はは、俺ははっきりと言ってもらわないとわからないんだ』
『…………きす』
『いいのか…?キスだけじゃ済まなくなるぞ?』





〜〜〜〜〜〜っ、
この人は……………





こうやって弄んで何が楽しいんだ……!
はじめっからそうするつもりで
キスしてるくせに…………
性根が悪い






『……ディオ?』
『…………じゃあキスもしないで下さい』
『ぷっ、は、…………やっぱりお前は最高だ』






ふわっと笑った顔は子供のようで
普段のキリッとした印象とのギャップに驚いた





…………かわいい……






『っ、…ん』







僕はまたCEOと唇を重ねていた


さっきよりももっとずっと深く___









_____溶ける_____







いままで感じたことのない快感に自分を見失っていく







入れ代わり立ち代わり
CEOを求めてここに来る理由が
いまなら分かる







今日から僕もその中の1人____







Fin♡






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