短編
□烏
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「おいジューゾー!! お前どういうつもりだよ。 自分のやったこと分かってんのか?」
「政道くん、ちょっとやめて!」
「セードーどうしたです?」
CCGの廊下で、なまえを庇うよう什造の前に立ちはだかった。
「俺となまえが付き合ってるの知ってんだろ?」
「だから何です?」
「何で俺の女に好きとか言ってんだよ!」
苛々した様子で、ダン!と床を踏みつけた。
「好きな人に好きって言って何が悪いんです?」
少し苛ついた様子で答えた什造に、政道の怒りのボルテージは急上昇した。
「お前なぁ!唇がおかしみたいだとか言って強引にキスしたことだって知ってんだぞ!俺だってまだしたことなかったのに!」
「? だから、何で好きな人にキスするのがダメなんです?」
政道の肩が震え出した。
「……いい加減にしろよお前!」
勢いを付け什造に殴りかかったが、軽々と避けられバランスを崩し、床に叩きつけられた。
「ぐぁ!」
「政道くん!大丈夫?」
蔑んだ目で見下ろす什造が口を開いた。
「ふふ、カッコ悪いですねぇ」
「うぅ…クソ!お前絶対許さないからな!」
什造は政道を見下ろしたまま、ふぅ、とため息を吐く。
「僕よりちょっと先に出会ったからって、どうしてなまえさんを自分のものだなんて言えるです?僕はなんと言われたってなまえさんが好きです。お前にそれを止める権利なんかないはずです」
それに、と続けて言った。
「なまえさんが断っても、しつこく何回も好きって言って しょうがなく友達から付き合い始めたのも知ってるですよ?だからキスも出来ないです」
「ぐ……だからって、俺の気持ち知ってて!」
「だからー。お前がどう思おうと僕にはどーでもいいです」
「良くねーよ!大体おま
「わーわーうるさいですねぇ。なまえさん、ちょっと失礼するです」
什造はヒョイとなまえを横抱きにした。
「え!?鈴屋くん?」
「なまえさんは僕がもらっていきまーす」
「は?…おいおい、ちょっと待て!」
ぴょん、と窓枠に飛び乗るとニコ、と笑いすっと飛び降りた。
「嘘だろ、ここ三階だぞ…うお、痛て!」
捻った足の痛みに耐え無理やり立ち上がって窓の外を見下ろすと、見上げる什造と目があった。
政道がこっちを見ていることを確認すると、これ見よがしになまえにキスをして政道にべぇ、と舌を出した。
「なまえさん?」
「は、はい…?」
「なまえさんは今日から僕のものです。僕のことは什造って呼んでくださいねぇ〜」
fin