短編

□夏祭り
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今日はCCGの皆で浴衣を着て花火大会に来た。
花火が始まるまで時間があるので、沢山の屋台をワイワイ見て回る。

アキラちゃんに髪を結わえてもらった什造くんは男物の浴衣を着ていても女の子みたいで、道行く男性の視線を集めていた。
私も浴衣で来たけれど、美人のアキラちゃんと可愛い什造くんに挟まれると、気後れしてどうしてもするすると後ろに下がってしまう。

「どうしたです?」
「いや、なんでもないよ〜」
半笑いで返す。篠原さんに買ってもらった林檎飴を食べながら歩く什造。
さらに少し下がって歩くと、什造も少し下がって歩く。
「お祭りって、面白いですねぇ」
「そうだね、什造くんは初めて?」
「です!」

「ジューゾー、これやったことあるか?」
亜門さんに声をかけられる
「金魚すくいです?ないですねぇ」
「よし、俺と勝負しよう。この紙で掬うんだぞ」
「やってみるです」


接戦の結果、一匹多く掬った什造が勝った。
「くそー自信あったんだがなぁ」
「えへへ、勝っちゃったです」
「すごいな、ジューゾー」
「さすがだな」
皆に褒められ、少し得意げな什造。

「なまえさん、見てください。金魚もらっちゃいましたぁ」
赤と黒の金魚がゆらゆらと揺れる袋を嬉しそうに見せる。
「亜門さん相手に、すごかったね。金魚、可愛いね。」
「名前付けてあげましょうかね〜」
袋をつんつんとつつく什造。

「ジューゾー、今度はこれやるぞー!」
亜門さんがスマートボールの前で什造くんを呼んだ。
「また勝負です?しょうがないですねぇ〜」
スマートボール台に向かう什造。

追いかけようとした足に、ひりひりと違和感が。
足下を見ると、慣れない下駄の鼻緒に、足の皮がめくれて血が出ている。

ごそごそと財布の中やポーチの中を見て絆創膏を探すが、なかなか見つからなかった。

尚も探していると
「くそーっ」
という亜門さんの声が聞こえた。
勝負が着いたようだ。

皆がワイワイ言いながら、スマートボール台を離れていく。
「わ、ちょっと待って…」
私の声は人ごみに掻き消された。

足を引きずって追いかけようとすると、什造くんが私を探して戻ってきた。

「置いてかれるですよ?」
「あ、先行ってて。足怪我しちゃったから後から追いかけるよ。」
「足、どうしたです?」
「鼻緒で擦れちゃって」

什造は、人ごみに紛れる寸前の皆の方をちらっと見て
「ちょっと待ってるです」
と言い残し、走って行ってしまった。
浴衣なんて、着てくるんじゃなかったなぁ



数分後、人ごみを掻き分け什造が戻ってきた。
「篠原さんが持ってたですよ。」
と、手に持った絆創膏をひらひらと揺らした。
「ここだと貼りにくいので、ちょっと横道に出ましょう。はぐれないで下さいね」
と言って私の手を握ると、人ごみの中をエスコートしてくれた。
可愛い見た目とは裏腹に紳士的な什造くんにドキドキしながら、人ごみを掻き分け歩いた。
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