短編

□ひとりじめ
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什造と付き合って、1ヶ月目。
什造はとにかく、束縛がすごかった。

「今日は友だちと出かけてくるからね」
「友だち?本当にお友だちです?女の子ですか?」
訝しんだ目で私を見る

「そうだよ。女の子。今日中には帰るからさ、心配しないでよ」
「…僕からの連絡はすぐに返してくださいね?」
「わかったわかった。じゃあ、行って来ます」


そう言って家を出る。高校時代、同じ部活だった友達のカヨと久々に飲みに行くのだ。

「久しぶり〜!なまえ、変わってないね〜!」
「カヨも変わってなーい!元気そうで安心したよ」

久々の再開に、話が弾む。
「そういえば、なまえ、彼氏いるの?」
「うん、付き合って一ヶ月なんだ」
「ほやほやだね〜!どんな彼氏?」
「うーん。見た目は可愛い感じかな。ちょっとヤキモチというか束縛が強いみたいで」
「最初の頃は、皆そうじゃない?愛されてるんだよー。のろけやがって〜。」

お酒も進み、楽しくおしゃべりしていると


「お!なまえにカヨじゃん!!」

「あ!シンゴにコータ!!すっごい偶然!」

偶然、同じ部活だった同級生が隣の席に来た。
「ほんとやばいね!一緒に飲もうよ!」

もし什造に見つかったら、と一瞬考えたが、この流れで断ることは出来なかった。

それから、4人での同窓会のような飲み会が始まった。
近況報告や、部活時代の思い出話で大いに盛り上がった。

「そーだ、コータさなまえのこと好きだったんだぜ!」
酔って真っ赤な顔のシンゴが、部活の思い出話の流れで思い出したように言った。
「ちょ、やめろよ!!何で今そんな事言うんだよ!」
お酒に強く、顔色ひとつ変えなかったコータの顔が真っ赤になった。
「それマジなの?残念、今なまえ彼氏いるんだってさ。ね、なまえ」
「う、うん」

コータの顔色が今度は青くなった。
「えー!聞きたくなかったよーー!シンゴが余計なこと言うから、お前〜!」
「あははは!失恋だな!」

高校時代から今まで特に意識もしてこなかったコータだけど、秘めた想いを思いがけず知ってしまった今、少しコータに気まずさを感じていた。

「で、なまえさ、彼氏どんな人なの?」
少し拗ねたような態度のコータ。

「えっと、見た目は『プルルルルルル!』
大きな音で着信が。
画面を見ると、『什造くん』の文字が。

時計を見ると、終電も近くなっていた。
「お、うわさの彼氏?」
「ごめん、もう終電だから帰らないと」
「おっと、そうだね、私達もう行くわ。」

断ったものの、駅まで送ってくれることになった。
「いやあ、偶然とはいえ楽しかったな〜。な、コータ」
「楽しかったけど、お前のせいで俺は失恋したんだぞー!」
「まぁまぁ、また皆で飲もうよ。」
と、カヨがなだめる。

駅に近づいてきたとき、見覚えのある姿があった。
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