保管庫

□隠された心
1ページ/1ページ

小さい頃からの幼馴染だった弥彦と秋乃。
昔は二人でやんちゃをしてきたが、大きくなるにつれて弥彦は落ち着き、秋乃は亡くなった母の後妻としてやってきた女のせいで性格が歪んでしまった。
年上の弥彦は学校に通いだすと、その容姿からすぐにモテた。
その二年後、秋乃も学校へ入学した。
だが、歪んでしまった性格はすぐには戻るものではなく、不良や強者相手に喧嘩を売って、病院送りにするなどの問題ばかりしていた。

この日も問題を起こし、こっぴどく教師に怒られた秋乃は午後の授業をサボり屋上にいた。
そんな秋乃のもとへ弥彦がやってきた。

「また問題を起こしたのか」

『弥彦。んー、まぁね』

ニカッと笑う秋乃に弥彦は表情を変えないまま隣に腰を据えた。
ゆっくりと雲が風に流されていく。
それを見つめ、しばし沈黙が二人を包む。

「秋乃、いい加減笑うのをやめろ」

弥彦の言葉に笑いながら『え?どうして?』と尋ねる。
それに対して弥彦は

「感情を殺して笑うお前はお前らしくない」

と言った。
昔から秋乃を見てきた弥彦だからこそ小さな変化を見逃さない。

『感情なんて殺してないよ、僕は毎日が楽しいから笑ってるんだ』

そう言って弥彦に見つめられると被っていた笑顔の仮面が外れてしまいそうになる。

「…嘘をつくな、俺の前では素直になれ」

優しく、それでいて切なそうにいう弥彦に秋乃の笑みが僅かに崩れる。

『やっぱり弥彦には敵わないな』

笑って見せる秋乃の頬に一滴の涙が伝わったのは弥彦以外誰も知る由はない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ