庭球
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「暑い……」
「後少しでご飯の準備だろ?我慢しろよ」
「向日先輩は暑くないんですか?」
「いや、暑いわ」
「ですよねー」
各校に分かれて基礎練中陽菜は自分の仕事が終わり1番辛そうに筋トレしていた向日を手伝っていた。
この後はコート外を走るため向日は憂鬱な気持ちで陽菜と軽い会話をしつつ筋トレに励む。
今は8月。
まだまだ暑い夏真っ盛りで陽菜も額にかいた汗をタオルで拭う。
練習中ツインテールは邪魔になりポニーテールにした陽菜だが長い髪は鬱陶しいことこの上ない。
「髪切ろうかな」
「止めろ、鳳が泣くぞ。」
「ええ……マジですか」
「本気と書いてマジだ。」
噂をすればなんとやら。
「陽菜ー!ドリンク頂戴!」
「クーラーボックスに入ってるよ」
「え、手渡ししてよ!」
鳳が宍戸との筋トレを終えて走ってくる。
相変わらず元気だが図々しい。
陽菜は向日の足を抑えるのを止めクーラーボックスからドリンク2つを取りだし鳳と後ろからゆっくり来ていた宍戸に渡す。
「陽菜俺には!?」
「向日先輩まだ終わってないじゃないですか。腕立て伏せ」
「くそくそ!すぐ終わらすからな!!」
陽菜に言っても仕方ないのだが向日は猛烈な勢いで腕立て伏せを始めた。
体力無いのに勢い良くやってどうするんだろうか……。
「てか陽菜はちゃんと水分取ってんのか?」
「あ」
「あ、じゃねえよ!……たく……」
宍戸は大きなため息の後自分の被っていた帽子を陽菜に被せた。
「ドリンクはやれねえから代わりに貸してやる。」
「ありがとうございます!丁度暑くてクーラー聞いた部屋に帰ろうかと思ってたんですよ」
「お前……また跡部と日吉に怒られるぞ」
「さっきも慈郎先輩とサボってて怒られてたでしょ?」
宍戸ならぬ鳳にまで言われてあれは慈郎先輩がサボっていたのを咎めに行ったが最終的に流され一緒に木陰で休んでいた……だけなのだけど。
立派なサボりだと直ぐに陽菜は気付く。
「ドリンク勝手に飲んだら怒られるかな」
「日吉か忍足先輩のなら良いんじゃない?むしろ俺の飲む?」
「え、あー」
「熱中症になっちゃうよ?」
「じゃあ……」
「じゃあ……じゃないだろっ」
バシッといつからいたのか日吉に頭を殴られ痛みに頭を抑え後ろにいる日吉を見る陽菜。
「男が口つけたの簡単に飲むな。ほら」
「若、それ……」
「俺のは口つけてないから飲めば良いだろ」
まあ、そういう事でもないのだが。
「日吉、結局それじゃあ陽菜と間接キスになるじゃん!」
「お前は下心見え見えだな、おい」
鳳の言葉に素早く反応する宍戸。大きなため息を付き迷惑そうにキョロキョロする陽菜に自分の作ってこい、と声をかける。
今すぐ飲むのが得策だが氷帝1年は樺地を除きめんどくさい。
言い合ってる二人を残し陽菜はそそくさその場を離れた。