庭球

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氷帝学園高等部男子テニス部が新体制になった夏休みの最中。



部長の跡部が楽しげに合同合宿するなんて言い出した。



参加校は氷帝含め、立海、青学、四天、ルドルフ、山吹……6校で行われる合同合宿はただの合同合宿ではなく……



中学時代の選手に全校がなりつつある親睦会なるものだった。










「1週間って……長くない?」



ポツリと洩らした言葉に隣に座る日吉若がめんどくさそうに頷いた。


現在合宿する跡部の所有地である宿泊所に向かうバスの中ペラペラと紙の束を捲り不満げに座る氷帝のマネージャー朏陽菜は大きなため息をついた。



彼女は中学2年からマネージャーをやっていたが家の都合で長期の合宿は何時も参加せず今年初めての合宿に不満を漏らしていた。



と、言うのも合宿をやると聞いたのは急な事で家の者を困らせてしまったし急な準備はめんどくさく……親しくもない奴等のサポートが嫌だと言う理由もありとにかく陽菜は合宿に行きたくなかった。


だが今まで行けなかった運が回ってきてしまったのか丁度暇な時の合宿……家にいる祖父母が嬉しそうに準備し出した為やむを得ず行きたくないとは言えなくなり……仕方く、仕方なく参加したのである。



そして現在紙の束を捲り見る陽菜だが果たしてその内容は頭に入ってるか定かではなく今にも握り潰してしまいそうな程手に力を入れている。



「他のマネージャーは関わりはあまり無いが他校の選手は覚えてるらしい……覚えてないのはお前だけだ」



との理由で跡部に無理矢理持たされ渋々見るがレギュラーだけでも多すぎて断片的にしか覚えられそうにない。



「大丈夫だよ、陽菜!不安だろうけど俺も何かあったらサポートするから!!」



「長太郎……」



「鳳、そいつを甘やかすな。」



「無理ですよ。こいつら同じクラスで周りが引くほど仲良いから」


陽菜と日吉の後ろにいる鳳が立ち上がり陽菜に話し掛けると跡部が訝しげにそちらに目線を向ける。


因みに跡部は通路挟んで日吉の隣、鳳の隣は宍戸だった。



窓際に座るため日差しが邪魔になりカーテンを閉める陽菜に鳳が手伝い宍戸と日吉はこいつらは……とため息を吐く。



鳳は陽菜と中1からクラスが一緒だったせいか異様に仲が良い。


マネージャーになったのも鳳が誘ったからであり、高1で初めて二人と同じクラスになった日吉もよく3人で行動するのが多くなったがまだスキンシップの激しい二人は見慣れない。



まあ陽菜なら“忍足”ともスキンシップ……は激しいが。



「後、合宿で不純異性交遊はするな?いいな?」



「私から誘ってないし。」



「陽菜可愛いから心配……」



「それが問題なんだろ……朏は」


まあ、上記でも述べた様に陽菜は自分から誘ってる訳ではないが忍足を含め多数の男子と関係を持っている訳だが……男子テニス部はそれを黙認している。



何故ならその理由と自分達も1回は一緒にそういう事をした覚えがあるから。


樺地と跡部、宍戸と向日はしていないが他の者は陽菜と本人以外知らないがそういう事をした経験がある。



普通にマネ業はするし、陽菜本人から誘ってる訳ではないので誰も咎めはしない。


受け入れる本人も本人なのだが。


「そういえば部屋とかって1人部屋何ですか?マネージャーって」


「アーン?んな訳ねえだろ。マネージャーは5人一緒だ。」



その言葉に残念がる者数名安心する者数名。



「ねえねえ若、これ見てワカメ」


「お前……初対面でワカメとか言うなよ」



「こっちは……おでんの煮卵!」


聞けよ



日吉に話はするがそれについて会話する気はないらしく選手の特徴だけを器用に挙げていく陽菜に日吉は変なこと言うなよ、と冷や汗をかいた。



初対面で日吉に人付き合い苦手なせいかキノコと真正面向かって言われた事はないが何回かキノコと言い間違えをしていた様なので切原赤也をワカメ等と口走らなければ良いが……
と日吉はやはり心配していた。



今は氷帝テニス部と仲は良いがこうなる前まで朏陽菜と言う女子は誰が見ても最低だと罵られるような悪女だったのだから。
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