世界を渡った先

□第一話
1ページ/3ページ


目が覚めて一番に目に入ってきた景色は天井の木目だった。
広い和室のど真ん中に寝かされていたようだ。
寝起きのような気だるさを感じながらゆっくり起き上がり辺りを見渡す。
なかなか広い日本屋敷みたいな内装だが、これが私の家なのか。
そうだとすれば、かなり広すぎて困るなぁ。
ぼんやりどうでもいいことを考えながら一通り家の中を探索すべく重い体を立ち上がらせ、ゆっくりとした動作で歩き回った。
どうやら神との面会時間が長かったためか、体が重い。
こんなペナルティは欲しくなかったなぁと独りごちて最初にいた部屋に戻ってきた。

『…とんでもなく広い屋敷だけど、ここに私ひとりで住むのよね』

はぁやれやれ、なんてため息をつきながら庭や内装を思い出し頭を抱えた。
その時見えた竜胆色の毛に憂鬱な気持ちになりながら、先ほど洗面所で髪を引っ張るほど動揺したのも思い出した。
トリップ特典でこんな髪色になるなんて誰が想像する、誰もいやしないだろう。

それに庭には鍛錬しろと言わんばかりの兵器の数々と丸太がどんっと構えていたし。
冷蔵庫の中は所せましと食材がはいっていた…なくなったらどうしようなんて考えたらまた増えたけど。
あれ、多分神様的良心で異次元にでもつながってるんだろうと思う。

うん、あとは普通に客室と茶室、大広間。いろいろあったけど使う日は来ないだろう。私にそんな優雅な趣味はないし、迎える客もいやしない。

むしろこんな戦国乱世に友人と言える人物はできるのだろうか。
……ここは夢は大きく交友で天下統一なんてしてみてはいかがか、なんて出来もしなさそうなことを考えるほどには時間がありすぎて暇だ。
かと言ってこの時代に合わせてかテレビもなければインターネットにつながるものはないし、ゲームだってない。
暇つぶしに出来そうなものといえば散歩と鍛錬だけのようで。

『はぁ、死なないように…鍛錬しよ』

そう言って私は買い物にでも行くようなノリで鍛錬を始めた。
こんなところで死ぬのはゴメンだから、ね。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ