夢心地

□追いかける
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嗚呼、私の小さなつま先で貴方の踵を追うのは苦しいの。

早歩きしたって、走ったって追いつけないその踵を、私は何時から追ってるんだろう。
いつ爪先が触れられるだろうと確認しながら歩くのだけど、ただの一度だって追いついた事は無いの。
心臓が高鳴って、息が切れてしまうの。

体力の限界じゃないのよ。

恋心の限界なのよ。



「張大兄、お仕事終わりましたよ。こちらです。」

「ああ、ありがとう。」

「このままお出かけですか?」

「まぁな。彪は別のところに向かわせているからな。チゥ、付いて来い。」

「はい」

2人で出掛けられるのは嬉しいけれど、また追いかけっこだな、なんて考えた。






チゥはいつも下を向いて歩いている。
俺が振り向いても気づかない程一所懸命に何をしているのかと思っていたがある日気づいた。

彼女は俺の踵を追いかけている。
ついつい、意地悪がしたくなって速く歩いたりしていたが自分を必死に追うチゥが可愛らしく思えてきて今日はわざと2人で歩いてみた。

やっぱり追っているな。突然追いついたら驚くかもな。



目の前の張が突然歩みを止めて止まり切れなかったチゥは張の踵にぶつかりつんのめる。それを見越していたであろう動きでチゥを、受け止めた。

「も、も、申し訳ありません!」

離れようとするがしっかり掴まっている。

「チゥ、踵に追いついたか?」

ニヤリとする張と目があった後、足元を見ると張の足の間に自分の両足が収まっている。

「……と、通り過ぎてしまう所でした……」

「おう、ギリギリセーフだな。」

そう言ってチゥを離すとまた歩き出してしまった。私の気持ちを知っての気まぐれだろうと分かっていても激しく波打つ胸を止められない。
待ってください、と小さく言ってまた歩き出した。



チゥの気持ちは知っている。
でもまだ、まだ。
追いかけてる君が余りに可愛いからもう少し、このままで。
もし俺が追いかけてくるチゥに飽きたら、
俺が追うのも、悪くない。

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