カウンター×カウンター

□水曜と木曜のゴング2
2ページ/8ページ

着信番号を
藤井 と電話帳に新規登録をして
鞄に戻す。

「なんだよ
デートかよ、いい身分だねぇ」

「あほか。
古い知り合いと、ご飯に行くだけや」

「昔の男かよ」

「ちゃうわ!」

(そんなんと食事とか、よう出来ひんわ!!)

「お前に聞きたいことあんだ」

「なんや」

角のある返事をする名無しさん(名前)

「なんだよ!普通の質問だよ!
んな、いちいち突っかかって返事しなくてもいいだろうが」

(いい加減、機嫌 直しやがれ)

「あぁあ
大事なカップやったのになぁ……」

肩を落とす
振りをした。

「う!……
そのカップの事だよ」
(か、返す言葉も見つからねぇ)

「一歩君から聞いたんやろ?」

「カップの経緯は知ってるよ。
どの動物が誰なんだよ」

(え?……
い……言い辛い)

まさかの質問に言葉を詰まらせた

「そ、その大きい欠片にある虎は
ゴン……千堂君やって」

無難に千堂とイメージする動物から説明する

「やって って、なんだそれ」

「うち的には、ここの猫の方が、アレに似てるねんもん
せやけど、本人は虎って譲らへんから」

近づいて、割れたカップの欠片を指差しながら
絵柄の説明をする。
虎は横向きに描かれていて、歩いているが
猫は座って正面を向いて、尻尾を立てている。
口角が上がっているように見えるので
なんだか笑っているようだ。

「ぶはは!確かに。
毎度って言ってそうだぜ」

「せやろ?
うちのイメージはコレやねん」

「だがな
あいつはリングの中だと
こんな可愛げある動物じゃねぇ。
お前は見たことないだろうが、試合じゃ獰猛な動物だ。
リングに上がると、いっぱしのボクサーだ。
目つきも鋭い。
言っちゃ何だが、一歩とのタイトルマッチ前の防衛戦で
ブチギレて、あいつは、相手選手を再起不能にしやがったそうだ。
レフリーが止めてなきゃ、間違いなく殺してただろうな。
お前の可愛い猫は、実はでけぇトラなんだ。
プライドも高い」

「爪と牙は
いつも何処に しもてるんやろ。
そんな風に見えへんのにって思うけど
一歩君もミット打ちの時、ちょっとエエ目つきするもんなあ。
……あの子とゴン…千堂君の試合、見てみたかったなぁ。
なんや、ちょっと残念。
ていうか、ウチの可愛い猫って、なんやねん」

「いや、お前に懐いてたじゃねぇか」

「猫は人には懐かん。犬は人に着くけど
猫は家に着くって言うさかいな。
けど、実家の猫は帰るとスリスリしてくれるし……」

「スリスリ?」

「2階から降りてきて出迎えてくれて
足に擦り寄ってきてくれるねん」

嬉しそうな顔で話す名無しさん(名前)

ふぅん
とカップを見ながら鷹村は返事をする

「青木はコレだろ」

と猿を指した

「失礼やな!当たりやけど」

と笑った

「木村はどれだよ」

「キツネかなぁって思ったけど
こっちの馬かな」

「お前
……前髪だけだろソレ」

「……でも一歩君はコレしかない」

と、柴犬のような犬を指した

「目ぇなんかソックリやん。
リングの上ではちゃうやろうけど。
あとはこの鹿かなぁ。
得意ブローがガゼルパンチなんやろ?
ガゼルって、鹿やん」

「で?
オレ様はどれなんだよ」

(キターーーーーー!!!
適当に嘘言うても、こいつ勘がええから、バレる!
せやけど、正直にゴリラって言うて怒らんはず無い!
……てか、何でカップ割りおった張本人に気ぃ使わなアカンのよ!
もうええわ!)

「ど
どうみても、コレちゃう?」

胸を叩くポーズのゴリラを指した

鷹村は、こめかみに血管を浮き上がらせた。

「てめぇ
押し倒されてぇのか!」

「う、嘘言うてもどうせバレるもん!
正直に言うたんやん!
カップ割ったくせに、怒るか?!」

「オレ様はコレだろが!」

ライオンを指差した。

「動物の王様!
百獣の王、ライオンだろが!」

「って言う姿が
もう コレやん」

ゴリラを指した

「あほかお前は!
世界王者になる人間に向って!」

「獣の王様はな
もっとドッシリしとるわ!
……ライオンやと思うなら
試合流れたかも知れんけど、ドシっと しとり!
日本では王様やろ」

「ジジイやお前が
やって来た事がオレ様の体に流れてる。
気持ちもな。
そういうもん、砕かれちゃ、誰でも不機嫌になるだろうが」

(8割自分の事やろ)

「とにかくだ
……カップ、悪かったよ。
代わりがない事ぐらい、オレ様でも分かるからよ」

(一応は反省しとるんかな)
仕方ない と納得しかけたが…

鷹村は接着剤に再び手を伸ばす

「ちょっと!分かってるんやったら
ウチに直させて!!」

接着剤を取り上げようとする

「遠慮すんなって」

鷹村は笑って接着剤を ヒョイっと高く上げる。

「ちょっ!
もお!!ええ加減にし!」

「取り返せたら
直させてやるよ」

名無しさん(名前)の手を何度もかわす


―――「……わざと頭ぶつけにいったりするんですよ……」―――

(いや
リーゼント邪魔やろ)

「あ!」

と言って名無しさん(名前)は扉の方を見た

「あ?」

鷹村が釣られて同じ方を見る。
すかさず接着剤を奪い取る

「てめぇ汚ねぇぞ!
フェイントなんか使いやがって!」

名無しさん(名前)は爆笑していた

「綺麗に……
あんな綺麗に、ひ…ひっかかるとは」

鷹村は
うるせぇ
と そっぽを向いた

「ありがとうな。
これは、ほんまに自分で直したい」

「お前はどれだよ」

「へ?」

「この中のどれがお前だよ」

「そんなん考えたこともなかったわ。
……めっちゃ普通に お前って言うな……」

半分諦めた。

鷹村は絵柄と名無しさん(名前)を見比べる
「どれもしっくりこねぇな」

「まぁ
ウサギとかリスとか
可愛い小動物ではないって事言いたいんは
よう分かったわ」

と名無しさん(名前)は笑った
窓際まで歩いて、ふと外を見ると
一歩たちが玄関先にいるのが見えた

「一歩くんとか
アンタの事待ってんちゃう?
3人玄関先におらはるで?」

「ガキじゃあるまいし
別に一緒に帰らなきゃいけねぇ必要ねぇよ」

「……
今日も取りあえず一緒に帰りぃな。
そのカップの事もあるから、3人 下におる気ぃするけど」

「わぁったよ」

そういうと名無しさん(名前)の後ろから窓の外を見た。
そのまま窓を開けて
下の一歩たちに向かって

「なんだよ!テメーらは!
これからイイ事始めるっつうのに邪魔しやがって!」

名無しさん(名前)は鷹村のミゾオチにエルボーを入れた

「ぐはっ!」

「あるわけないやろ!!!」

と、部屋から蹴り出した。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ