カウンター×カウンター

□水曜と木曜のゴング2
1ページ/8ページ

「電話、出るわ」

手を解き、席を立つ。
鞄から携帯を取り出して、開けると
見覚えの無い番号だった

(誰や)

「はい」

「名無しさん(苗字)か?俺だ、藤井だ」

「びっくりした。知らん番号やったんで
出るん一瞬ためらいました」

「明日の夜、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」

ふと、気になって机の方へ視線をむけると
割れたカップを鷹村が手に取っていた。
少し電話を顔から離して

「ええって!!うち、自分でするから!!」

「心配すんなって。
ちゃんとやってやるから。
電話中だろ?ほら」

しっし と手で払われる

名無しさん(名前)は電話に戻り

「ちょ、ちょっと待っててください」

「あ?ああ……」

電話の向こうで藤井が不思議そうに返事をした。

「ちょ、ほんま自分でやるから!
いや、やらせて!お願いやし!」

「遠慮すんなって」

「あ!そこ!
それ、ちがうから!!」

「任せとけって」

「無理無理無理無理!」

「電話
いいのかよ」

(もぉぉ!お前わざとやってるやろ!!!)

名無しさん(名前)は再び電話に出直す

「すいません!!」

「……いや
取り込み中か?」

「全然!!平気ですよ」

藤井は電話の向こうで少し笑っている

「電話越しに聞こえる分には
全く平気じゃ、なさそうなんだがな。」

「いや、あはは
ご、ご心配なく」

「状況が見えない分
聞いてるだけじゃ、、エロい会話にしか聞こえないんだよ」
と、藤井は笑っているが

「本当に何でもないのか?」

という声は、真剣だった

「大丈夫です。そんな事は一切起こってませんよ」

「明日、ジムに迎えにいくよ」

「え!?
それは…ちょっと…」

「マズイか?
お前、俺と知り合いだとは言ってないのか」

「あーー!!
もう、アカンって!!!」

鷹村が接着剤を開けた

電話の向こうで

「なんだよ!!!」

と藤井が少し声を大きくした

「ちゃいます、こっちでちょっと。
ていうか、いっぺん切ります」

と電話を切った

「自分でやる!」

鷹村から接着剤を取り上げる。

「何だよ、電話切っちまったのか」

「やっぱり、わざとやっとったな。
子供か!あんた」

「一皮剥けて
毛も生えてるよ」

「剥けてるほうが、ええに越したことないな。
毛は知らん
って、あんな、ウチが関西人で感謝しぃや
一応ノッてあげるけど、こんなド下ネタ、普通やったら引くわ」

「ふっ
変な女だな、あんた」

鷹村は柔らかな目の笑顔で
頬杖を着いて名無しさん(名前)を見る。

はぁ
とため息一つ着いて
電話を掛けなおした。

「もしもし
すいません」

「もう大丈夫なのか?」

「はい
あの、明日、待ち合わせで」

「どこがいいんだ?」

「いや、どこで食べるんですか?」

「社の近くに最近できたイタリアン、どうかと思ってるんだが
カジュアルレストランなんだが、どうだ?」

「楽しみです」

「じゃぁ、終わったら連絡くれ。
これ、俺のプライベートの番号だから」

「わかりました」

と、電話を切った
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ