カウンター×カウンター

□変化のゴング
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「おはようございます」
鴨川ジムにきて約一ヶ月が過ぎた
名無しさん(名前)は相変わらず化粧っ気はなくメガネ姿
リュックはいつも重そうだった
いや、実際重い
ノートパソコン一台に、家にある栄養学の本やら
食物の栄養素の辞書など、本は数冊入っている

ジムに入るなり鴨川に

「お嬢、ちとええか?」

と呼ばれた。
他にトレーナーの八木、篠田も一緒だった

(何々何々!?うち何もまだしてへんで!!!めっちゃ怖いんやけど)

リングサイドを抜け、いつものように階段へ通じる扉を開けようとして
背負っていたリュックを扉の近くに下ろした

通路の奥にはシャワールーム

地下にはもう一つのリング

二階には会長室と会議室が何部屋かある

「お嬢、八木ちゃんと篠田くんとで話し合ったんじゃが……」

「はい、なんでしょうか」

(辞めろは止めてぇぇ!!!引越ししたばっかりやし!!堪忍やーー)
口元がヒクヒクしそうだった

「ビビらんでええ。
2階の会議室の一室、お嬢の部屋にすることにしたんじゃ」

「え?」

「いつもトレーニングルームのベンチでデーター取ってまとめてるの
篠田君も僕も関心してたんだよ。
すごい目つきであの子達の事みてるし、
机がないと、字も書きにくいだろうから。
部屋があってもいいんじゃないかと思って
会長にそうだんしてみたんだよ」

名無しさん(名前)は口を半分あけたまま放心状態だった

「こら!
嫁入り前のお嬢さんが、なんちゅう顔しとるんじゃ!」

「す、すいません!!!
そんな…こんな待遇していただけるとは思てなかって…」

「まだあるぞ」
と篠田は続けた

「その部屋に簡易ではあるが流し台を作る。小さめの冷蔵庫も用意した。
火気はできるだけ控えたいからガスコンロはないが……」

「じゅじゅじゅ十分です!!
簡易でキッチンや冷蔵庫まで。コンロは逆に無いほうがええですわ。
換気扇つけてあったとしても、調理したら、めっちゃ匂いでますし
減量中のあの子らにはキツいし……
こんな事までしてもろて……
なんて言うたらええか……」

「お嬢
お主、何かを忘れておる事にまだ気づいておらんのか?」

「え?」

鴨川はデスクの引き出しから一冊のノートを出した

「ああ!!
ほんまや!
2冊目いったから、無いことに気づいてへんかった……
すいません!!注意力なさすぎて……」

(何気ぬいとんねんっておーこーらーれーるー!!!)

「たしかに、気が抜けとるわ!
こんな大事な宝物を忘れるとは!
日本タイトルのベルトを粗末に扱う、あのバカものと一緒じゃわい」

「……はい
すいません……」

「いや、わしも謝らにゃならんのじゃ」

「何ですか?」

「中を見たんじゃよ。最初は何のノートかと思ってめくっただけだったんじゃが、
あいつらも付けとらんトレーニング日誌のような内容に
割り出した消費量が毎日毎日
しかも一人一人書かれておる
お主は、わしらに、あやつらの食事内容の相談しにくるが
わしの経験上からいうと、90点じゃ。
一ヶ月でようここまでしてくれとる。
あと10点は、ここに台所があれば、ええじゃろ。
そう思ってな」

「僕たちトレーナーとしても、とても助かってるよ。
選手のトレーニングに付き合うことに集中できるからね」

と優しい笑顔の八木

「これからも、がんばってくれ
いや、一緒にチャンピオンを育てようなじゃないか!」

小さくガッツポーズをとる篠田

「それでじゃ。
今日の午後から業者が入る予定じゃ。
お嬢が業者に指示すりゃええ。
会議室の片付けは小僧にでも手伝わせろ。
力だけはあるからの」

驚きと感謝で言葉がでなかった
期待されているだけではなく
信頼までされていた

「ただ!鍵だけは付けるんじゃぞ」

「あ、はい
ですよね。冷蔵庫とか危険ですよね」

「うむ
あと、スケベ大王にも気をつけるんじゃぞ」

「ご安心を!」と笑い
「ほんまに、ありがとうございます!」
と三人に深く頭を下げた

「こら!また置いてく気か!宝物を」

と鴨川にノートを渡された

「……たからもん……」

「そうじゃ
鴨川ジムへ来て、お嬢がやってきたこと
これからやる事、その始まりじゃぞ」

名無しさん(名前)は大きく息を吸い込んで
「はい」
と元気に返事をした
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