過去拍手SS

□過去拍手 上司の事情…
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翼が捜査を終えて警視庁に戻った時、入口の奥にあるエレベーターの脇で上司を見つけた

(室長、?)

そこには自販機も置いてあり少し広くなっていてソファもある場所だった

ただ、室長がいるからか…いつも賑わうそこには誰もいなかった

室長はエレベーターの横の壁に肘をついて何かを隠すように立っていた

壁から少し離れ頭を掻いた時に見えた室長の向こう側に長い黒髪の女の人がいた

その女性は泣いているのかハンカチを目に当て下を向いていた

室長は頭を撫でようとする手をすんでのところで引っ込める

見上げてくる女の人の頬に伝う涙を拭おうと触れそうになる指先もスッと下げられた

翼はその場を動くことが出来なくてその一部始終を見ていた

ふと携帯を取り出し電話する室長がどんな顔してその女性を見つめているのか気になって仕方なかった

その時、翼の携帯が鳴り出した!

慌ててポケットから取り出し確認すると相手は室長だった

えっ?と思い穂積の方を見ると確認するように辺りを見回す上司の姿…

目が合った

翼はバツが悪そうに目を泳がせるがそんな事には構うこと無く『櫻井!!』と大きな声で呼ぶ上司に身体が動く

『室長!どうかなさいましたか?』

『悪い、この人を家まで頼む!』

と女性に頭を下げ足早に去る穂積に名残惜しそうに頭を下げる黒髪の綺麗な人

翼に向くと『すみません、』と言う女性に慌てて敬礼すると車を回して家まで送って行った

すっかり暗くになった警視庁に着き捜査室に向かう途中で煙草の煙と共に漂う香り

(あ、明智さんかな?…でもいつもと違う、香り)

ふと灰皿のある自販機前を覗くと穂積がタバコを吸っていた

『あっ、室長、』


『櫻井、悪かったわね、押し付けちゃって…』

『いえ、あの、あの人は?』

煙を吐き出し遠い目をする穂積の横顔にドキリとする

『…たまたま見つけた美味い酒の店でたまたま落ちてた女のネックレスをたまたま刑事の俺が拾って近くの交番に届けた』

『それで、どうして、泣いて…』

室長は煙草を消すとため息をつく

『亡くなった人の形見だとかで、わざわざ探して御礼に来てくれたんだけど、ロビーの真ん中で泣かれた、』

慌ててエレベーターの脇まで連れてっても感謝されっぱなしで困っていた、との事…

『な、んだ、てっきり、』

『てっきり?』

(あっ、しまった、かも?)

『オレが原因で女が泣いてるとでも?』

『い、いえ、そんな事、お、思ってません!』

『ったく、女に泣かれるなんて久しぶりで…うまく慰められなくて…困ってお前に電話した』

『そ、ゆう、事だったんだ…』

『そしたら、なんでか後ろで一部始終見られてたんだよな〜』

お前に、と近づく顔に真っ赤になる翼の頭を撫で頬に指先を滑らせた

『こうした後、何するかわかるか?』

『やっ、しつ、ちょ、ダメ…いたっ!!!』

室長のデコピンが炸裂した

『アホ、…ほら、行くぞ!』

何でか優しく繋がれた手をほどけなくて、赤い顔を隠すように下を向き捜査室へと戻った

(キス、してほしかった、かも…)


ありがとうございました^^*

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