アブナイ恋の捜査室


□恋する室長
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翼は捜査室の扉の前でピタリと止まった。

捜査室の中から室長が誰かと電話をしているような声が聞こえていたから…

『いいから、さっさとしろよ?あぁ、うるせー!わかってるよ!!』

ピッと電話を切ると…穂積は椅子に深く座りため息をついた。

電話が終わったとわかるまでしばらく扉の前で待っていた翼はようやく捜査室の扉を開け中に入った。

翼は交通課から移動して今はこの捜査室で藤守とコンビを組み捜査している。

大きな事件がひとつ解決して今は下着泥棒や置き引きに露出狂といった事件の捜査が続いていた。

カチャリっと扉を開けると何も聞いていないふりをして穂積に挨拶をした。

『おはようございます!室長。』

『あら、おはよう、櫻井はいつも早いわね〜。』

そう言って笑うと頭を撫でられる。

いつもの事だ、最初は顔が赤くなったりもしたが、今では慣れてそれが当たり前になっていた。

翼は穂積に引き抜かれこの捜査室に来た。

第一印象はやたらとキレイな人。

でも喋りがおねぇ…

そして職場のお父さん…

(室長っていったい…、何者なんだろう…如月さんや藤守さんは悪魔って言ってたけど、)

ボーッと考えてると頭をファイルで叩かれた。

『いたっ!』

『何ぼさっとしてんのよ!』
気づくと穂積が呆れた顔で見下ろしていた

『す、すみません!すぐにお茶淹れてきます〜』

翼は荷物をデスクに置くと給湯室へと駆け込んだ。


給湯室でお茶の準備をしている翼の元へ白衣を着た男が近づいてきた。


『櫻井さん、おはよう!』

柑橘系の香りがふわりと香って振り向くと鑑識官の小野瀬が立っていた。

『お、はようございます、小野瀬さん。』

勢いよくお辞儀をすると顔をあげ小野瀬を見上げる。

『何事も一生懸命で可愛いね〜櫻井さんは。』

そう言って給湯室の奥へと追いやられる。

『えっ?あの…』

『あー!ダメですよ!小野瀬さん!翼ちゃんは!!』

ズカズカと入ってきたのは捜査室の先輩、如月公平だった。

如月が小野瀬を引っ張って出ていくと翼は、ホッとしてお茶を人数分+小野瀬の分も淹れて捜査室に戻った。

『櫻井、おはよう!ちょっと待て、扉開けるよ。』

『あっ、明智さん!おはようございます!』

出勤してきた明智が扉を開けてくれた。

『おっ、ありがとうございます〜』

そう言って翼より先に藤守が『おはよう!櫻井〜』と挨拶しながら滑り込んだ。

『櫻井さん、おはよう、手伝うよ…』
中に入ると最近打ち解けてきた小笠原が声をかけてきた。

『小笠原さん!おはようございます!』

その様子を見ていた小野瀬が口を開いた。

『櫻井さんは皆から愛されてるね〜』

翼はお茶を配りながら『えっ?小野瀬さんの分もお茶ありますよ?』

そう言うと小野瀬がクスクスと笑った。

『なに言ってんのよ、小野瀬〜?』

『穂積、コレ!分析したやつ!』

『おっ、サンキュ、』

資料を受け取ろうとした穂積に小野瀬が一言『これで約束守ってくれよ〜』と言っているのを翼は耳にする。

『わーってるよ!!早く出てけ!』

小野瀬を捜査室から蹴りだして穂積は捜査メンバーに『ミーティング始めるわよ!』
と声をかけ今日の捜査が動き出した。
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