遙かなる時空の中で5

□おもい
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カーテンの僅かな隙間から射し込む月光が、腕の中で眠る彼女を照らしている。
青白い光自体は微かで、いつもなら特に気にも止めない程度のものであった。
しかし、愛しいひとの透き通るような白い肌が光を吸収しているかの如く輝いて見え、その神々しさに息を飲む。


やはり、ゆきちゃんは天女の如く清らかで美しい


すやすやと眠る彼女を起こさぬように後ろから優しく抱き直し、見つめる。
数刻前の熱に浮かされたような視線や私を狂わせる甘い声など幻だったのだろうかと思うほどに、あどけない寝顔が愛しくて……







どのぐらい眺めていただろうか。
ふいに彼女が目を覚まし、まだ視点の定まらぬ瞳で射し込む光を捕らえ誘われるように手を伸ばす。



その姿はまるで…
かの物語の、月に帰る姫に似て



このまま月の使いに奪われてしまうのではないかと少しばかり不安になり、彼女の手を追い私のそれを絡ませる。


「ゆきちゃん……」


無意識に名を呟き、絡めた手を優しく握ると、彼女はそれに答えるかのように此方に体を向けて私の背に腕を回し、ぎゅっと抱き付いてきた。

「……っ」

背を向けられているときとはまた違った彼女の柔らかな感触に、鼓動が速まるのをなんとか悟られぬようにと気を配りながら同じように優しく抱擁に応える。





「………………キミが……月の使者に拐われてしまうかと思ったよ」


暫く無言のまま彼女を抱き締めていたが、このままではまた本能のままに求めてしまいそうだったので気をまぎらわすように言葉を紡ぐ。










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