遙かなる時空の中で5
□キミを想うと
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最後の戦いが終わったとき、私は身の切られるような思いをひた隠し、彼女に別れを告げた。
彼女たちと別れたあと、江戸の鼠山の邸に戻り庚申薔薇の世話を始め、毎日、遠く離れた愛しいひとを思い描きながら日々を過ごしていた。
それからふた月の時が過ぎ、庚申薔薇の芽吹く頃、彼女は突然姿を現した。
「桜智さん」
鈴を鳴らしたような甘美な声で己の名を呼ばれる度に、幻聴ではないかと疑ってしまう。
これは、都合の良い、己の欲にまみれた夢ではないのだろうか。
そんな風に思うときがある。
彼女が傍らにいてくれる。
ただそれだけで、私の心は満たされていく。
――だから、彼女にはそれ以上は求めてはいけない、傍にいてくれるだけで、私は満足なのだ。
そう思っていた。
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