パラレル短編

□紫の花嫁
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むかしむかし、あるところに、とても高慢ちきな女の人がいました。
女の人は花のようにうるわしく、宝石のようにきらびやかな美しさを持っていました。しかし、自分の美しさにおごり、彼女は神さまの怒りに触れてしまったのです。女の人は、大好きだった宝石を体に埋め込まれ、死ねない呪いをかけられてしまいました。
愛する人たちの死を見送り続けた彼女は、今も死ぬことができずに、この世をさまよっているのです。





「呪いか」


パタン、と本を鳴かせながら、ホーキンスは視線をあげた。その瞳が好奇心に満ちているのを確認して、部下は喜びを覚えた。表情の変化に乏しい彼らの船長が、自分が話したことに興味を示すのはなかなか嬉しいものなのだ。


「あそこは無人島ですが、島の中心に湖があって、そこに件の女が住んでいるそうです。都市伝説程度にしか思われていないようですが」


ホーキンスは今しがた閉じた本を棚に戻しながら、カーテンを開けてその先を見る。
現在ホーキンス海賊団が停泊している島の近くには、ほんの小さな無人島がぽつんと佇んでいた。草木が無造作に生い茂っているだけで、人は一人もいないという。
そんな島に住む、美貌を鼻にかけ神の呪いを受けた女。面白いじゃないか。


「行ってみますか、ホーキンス船長」


ホーキンスは島を見つめながら、部下の問いに短い返答を返してやった。
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