パラレル短編
□愉悦の唇
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心地よいまどろみの中、私は輪郭もはっきりとしないおぼろげな意識のままでいた。
あったかい。けど、かたい?
自分が張り付いているものの感覚をぼーっと考える。
何だろうこれ、と思いながら顔を上げると、安らかな寝顔で枕に頭を埋める、飲み友達の姿が目に映った。
「⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯ちょっと待って。
なんで私は彼と寝ているの? えっ? えっな、夕べ私何してたっけ? え、呑んでたわよ?普通にお酒呑んで⋯⋯あれ。
自力で帰った記憶ないわ。これ明らかに酔いつぶれちゃったよね。
え、じゃ何で彼と寝て、寝、この人裸、あっでも別に普段からこの人半裸にジャケットだし、いやでも事実の否定にはならない、えっ。
混乱した頭のままゆっくり起き上がると、私に絡みついていた腕がするりと素肌をくすぐって落ちた。
⋯⋯⋯⋯⁉
服⋯⋯着てない⋯⋯⁉
お互い、一糸纏わぬ姿でベッドに転がっていた。
そして鋭い頭痛と腰の鈍痛に、昨夜あったことが細かく思い出される。
私がスモーカーに、何をされたのかも。
⋯⋯⋯⋯あぁ、思い出した。
酔った勢いで、やってしまった。
サァァッと血の気が引くのを感じる。一瞬で思考する力が消えていった。
何てことになったのかと頭を抱えていると、横に寝そべった塊がもぞりと動いた。
驚いて跳ね上がった私は、掛け布団を引っ張って体の前を隠した。誰にってもちろん、友人だと思っていたこの男から。