パラレル短編

□隠れ鬼
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……繋がらない。

ここ2週間、連絡をしようにも、田噛のケータイに繋がらない。

メールも電話も全部無視、何をしようにも何の反応もない。

忙しいっていう連絡も無いけど、連絡する暇も無いくらいなのかな……。


「……田噛……」


虚しい呼びかけが口を突いて出る。誰もいない部屋では応える声などない。空に溶けて、消えるだけだった。







突然、ケータイが着信を知らせた。

バイト先からの連絡だろうか、と思って見てみたが、全く違った。

ディスプレイには、『田噛』という二つの漢字が並んでいる。それを見ただけで、私は飛び起きた。

あれだけ連絡して応じなかった田噛が、自分から電話をかけてきたのだ。私は急いで画面をタップした。


「……はい」
『よう、ナナシ』
「……どうしてたのよ、田噛。何回も連絡したのに……」
『悪りぃ、忙しくて連絡できなかった』


さも何でもないことのように言われ、何故か少しホッとした。

本当に、なんでもなかったんだ。ただちょっと、忙しくなっちゃっただけだったんだ。


『ところで、近いうちに会えねぇか?お前さえ良ければ、今すぐ会いに行ってもいいぜ』
「いいよ。明日、休みだし」
『そうか。じゃあ今から出る。ついでに泊まっていっていいか』
「構わないけど……仕事とかいいの?」
『お前の家の方が近ぇ。あとまた家に帰るのだるい』
「あはは、田噛らしい」
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