パラレル短編

□魔法鬼
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「えっちょ、平腹なんでそっち行くのよこっち来ちゃうじゃん!」
「悪りぃ入力ミスしちまった!」
「うわロックオンされたちょっと待て、ヤバいヤバいヤバい!」
「おりゃァッ!よっしゃ結構ダメージ食らった!」
「ナイス畳み掛けろ!!」


何をしているのかというと、最近出たゲームだ。

私たちは二人そろってゲームが好きで、暇があればよく一緒にゲームをしている。

よく得点なんかを競っているが、平腹には僅差とはいえ勝った試しがない。


「あーもー本当死ぬかと思ったぁー」
「ナナシは心配しすぎなんだよ。『オレが絶対にクリアさせる』って言ったろ?」
「あははっ、そうだねぇ」


平腹はいつだって、こうと言ったら必ずやり遂げる人だった。

まるで魔法の言葉でも言っているように、本当にその通りの結果を叩き出す。自分の力をきちんと理解しているから出来ることなのだろうが、だいぶ凄いことだ。

平腹は流石だなぁ、などと思っていると、これから伝えなければならない事に涙さえ浮かびそうになる。

と、途端に頬に鈍い痛みが走る。気がつくと平腹の指が、私の頬をつまんで引っ張っていた。


「平腹?」
「最近ずーっとそうだ!楽しそうにしてたかと思えば急にしゅんとして、オレにはなんでもなさそうな顔して」


平腹はむくれた顔をしながら、私の顔をぐにぐにと引っ張った。遠慮を知らず加減を面倒がる平腹にされると、だいぶ痛い。

たしなめる事をせずにその手を外し、ぎゅっと握る。

いつもと違って訝しげな顔をする平腹を見つめ、気分を落ち着けるために深く息を吸った。
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