パラレル短編
□手合わせ
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変わった遊びはナナシの十八番だ。
「……楽しいか?」
「ん?んー……微妙?」
鉤爪を持ち上げて軽く落とす。コン、と大して痛くなさそうな音すら、この女は楽しんでいた。
くすくすと可笑しそうに笑うナナシの左手は、俺の右手と合わさっている。
「ふふ、やっぱり手もおっきいのね、クロコダイル」
「……体格差もあるからな」
合わせられた小さな手は華奢で白い。温もりがじんわりと掌を伝い、とにかく心地よかった。
「そういえば、手の冷たい人は心があったかいっていう話があるけど、あれクロコダイルを見てたら明らかに嘘だって分かるよねぇ」
「フン、この俺の心が暖かい?笑える話だ」
「ねー。クロコダイルは心が冷たすぎて体まで冷えてるもんねぇ」
のんびりと言葉を紡ぐナナシの指の間に、同じものを差し込んだ。包み込むように握ってやると、いじらしい力加減が応える。
えへへ、と嬉しそうな声が溢れるのを唇で塞いでやると、甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「……冷えてきたな」
「そう?私はそうでもないけど……どうする?あっためてあげようか?」
先ほどまで可憐な微笑みを浮かべていたナナシは、その色を妖艶に変える。
完全に「してあげる」と言い切った彼女に小さく溜息をつき、鉤爪で顎を持ち上げる。
「素直に物を言えねぇのか、ナナシ」
きょとんと透き通った瞳を丸くさせた後、ナナシは照れ臭そうに叶わないなぁ、と笑った。
「……抱いてください、Sir.」
やればできるじゃねぇか、マセガキ。