パラレル短編
□糸と獲物
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ピタリ、と私の足が止まる。足だけでなく、全身が時間を無くしたように止まった。
別に私の意志ではないし、こんな事をできるのは一人くらいしか思い浮かばない。
いつの間に後ろにいたのかなぁ、などとぼんやり思っていると、背中にふわりと温もりが重なり、目の前にドギツいピンク色が舞う。
「フフッフフフ!久しぶりじゃねぇか、ナナシ」
「挨拶の度に能力使わないでくださいよ……」
漏れた声は呆れきっていた。コートに包まれるように、羽根が左右にかぶさって暑苦しい。
フフフ、と特徴的に笑うドフラミンゴの声をうなじに聞き取りながら、目を閉じて溜息をつく。
「会議までの暇つぶし、ですか」
「フッフ、まぁな。ちょうどいいから付き合えよ」
「私にも仕事があるのですが……」
どうせ仕事だのなんだのと言っても、海賊らしく自由奔放なこの人には通用しない。過去に何度仕事を中断させられたことか。
ふぅ、とまた小さく溜息をついて、体の力を抜く。
肩が僅かに下がったのを確認したのか、ドフラミンゴは私を抱え上げてその場を去った。
いつだって、ドフラミンゴは勝手だ。
気が向いた時だけ連絡を寄越して会いに来て、私の都合なんか考えてくれない。
それなのに、私はこの人から離れられない。
まるでその能力の糸に絡め取られたように、逃れることができないのだ。