海賊
□酒呑んできた狼
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自室に戻ると、冷たい空気が私を歓迎した。いつもと変わらないその歓迎を嬉しくも思わずに受け入れ、私は靴を脱ぎ石畳を踏む。
初めて海軍に連れてこられてから、地下にひっそりとあるこの部屋が私の自室だ。冬だろうが夏だろうが冷えているここは、石畳の上にカーペットを敷いて無理やり生活感を出している。
カーペットの向こう側においてある本棚からスクラップブックを取り出し、ぱらっと開く。
切り取られて並ぶ新聞の記事には、親父様、マルコ、ジョズ、サッチなど、白ひげ海賊団の内容ばかりが載っている。新しく入った隊長たちも余さずに切り取り、このスクラップブックに収めている。
私は、軍に連れてこられてから、ずっと悩み続けていた。
四番隊隊長・サッチ殺害事件。
頂上戦争の引き金となった、マーシャル・D・ティーチとポートガス・D・エースの戦闘。
そして、親父様とエースの戦死。
これらの事件を、止めるか否か。
エースの死によって、主人公ルフィは2年後までに成長を遂げる。きっかけがなんだったかは知らないが、エースの死によるショックがバネになったのは確かだ。
エースを救えば、ルフィは十分に成長できない。
親父様の死は、物語に大きな変化をもたらした。海賊の玉座を守る「最強」が死に、良くも悪くも世界は大きく動いた。
あの人は、戦争時にはすでに病気を患っていた。病は着実にあの人の命を削り、戦争が終われど余命は長くない。
その上、ティーチとの戦闘に、同じく四皇が一角百獣のカイドウもいる。ティーチは病に侵され戦闘で疲弊している親父様を倒しにかかるだろうし、一騎打ちにでもなった場合あの人は他人の介入をきっと許さない。あの死にたがりも確実に戦争に介入したがるだろう。なんせ、海軍と七武海VS白ひげ海賊団だ。強者たちの乱戦で悲願の達成を願うのは想像に難くない。
もっとはっきり物を言えば、戦争を生き残ったとしても、親父様はそのすぐ後に死亡する確率が高い。
サッチの死に関しては、これら全ての事件の引き金だ。
仮にヤミヤミの実を奪われ、サッチが助かったとしても、エースがティーチを追わなくなる可能性が出る。死んだか生き延びたかは大きな差だ。エースがティーチを追わなかったら、エースの代わりに誰があいつの被害に遭うかわからない。
白ひげ海賊団は、船長エドワード・ニューゲートの死と共に崩壊する。あの人の死ほど、私たちにとって辛いことはない。大きな先導者がいなくなり、縄張りも守れなくなる。
とはいえ原作が始まれば、あの人も71歳と高齢だ。世界最強、怪物とまで呼ばれたあの人でも、生きた人間。寄る年にはかなわず、長くても十数年程度で死んでしまうだろう。
あの人はエースを助けるまでは確実に止まらないし、もしかしたら私たちを守るために冷静でいてくれるかもしれないけど、エースが死んだら多分退却とか忘れて全力で暴れる。激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームの親父様を止める? 無理に決まってんだろ死ぬわJK。