海賊
□酒飲み狼
1ページ/5ページ
電伝虫越しの再会と、魚人たちとの初めまして。
やんややんやと楽しく宴をしているうち、夜はどんどん更けていく。
そろそろ切り上げなければ明日に響くだろう。さっさと帰って寝なければ。
「もうお帰りになるのでありんすか⋯⋯? もう少し楽しんでいかれても⋯⋯」
「ごめんねぇ。仕事が滞るとかわいい部下たちにも支障をきたしちゃうからさ」
ちょっと出来上がりかけてるルリチョウにそう言い、魚人たちに挨拶をして船を出た。
船から降り、煌々と光を注ぐ月を見上げる。
いい夜だなぁ。できれば船にこもってじゃなく、月見でもしながら一献したかった。
いただいたお酒はなかなか美味しかった。ほろ酔いとまでもいかないけど、予定より少し飲んじゃったし。日本酒も悪くないもんだ。
でもやっぱり、私には甘いカクテルサワーが一番あってるな。帰ったらもう一杯呑もう、ピーチサワーとライチサワーのどっちにしようかな。
お酒についてどうでもいいことをつらつらと考えてながら、帰路を急ぐ。
すると。
「⋯⋯?」
ざわり、と肌が粟だった。
無風でそこまで寒くはない。なのに、背筋に冷たい刃が滑ったように、鳥肌が一気に立った。
理由は簡単だ。
「さっきぶりだなぁ、嬢ちゃん?」
影に覆われて周囲が暗くなり、つい最近聞いた声が耳に届いた。
振り返ってみれば、3mもの巨躯が立ちはだかる。チェシャ猫の、いやそれよりずっと悪どい笑みが、私を見下ろしてニタニタと嗤っている。
月光を背負って影を落とすその姿に、言いようのない恐怖と不安を煽られた。
「フッフッフ、ずいぶん魚人どもと仲が良かったな」
「⋯⋯⋯⋯こんばんは⋯⋯」
突然の登場と見られてた事実にびっくりだよ。蚊の鳴くような声で挨拶すると、ドフラミンゴは何を面白がってか特徴的に笑った。
どうしよう。
船からは少し離れている。周りに助けを求められる人は誰もいない。私は小さく弱々しい海軍将校。相手は三大勢力の王下七武海の一角。
え、詰んでね?